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第57話:別れのとき

「ぶぅー。もうちょっとくらいゆっくりしていってもいいのにさぁ」


 リリナは口を3の形にしながらシリルのローブを掴み、いやいやと顔を横に振る。

 そんなリリナの言葉を受けたシリルは、困ったように笑いながら返事を返した。


「ごめんなさいリリナさん。できるだけ早くお二人のご両親を探したいので」

「むぅー。まあ、しょうがないか。でもいつでも来てね、歓迎するから!」


 リリナは不満そうにしながらもシリルの言葉に納得したのか、腰に両手を当てて満面の笑顔で言葉を発する。

 そんなリリナの足にリセはぎゅっと抱きつき、小さく言葉を落とした。


「またね、お姉さん。これからも魔法少女頑張って」

「おう! “少女”かどうかは微妙だけどな!」

「こりゃークソガキ! 誰が年増の痛い姉ちゃんじゃい!」

「そこまで言ってねえよ!?」


 リリナの言い草に驚いたレウスは、ガーンという効果音を背負いながら返事を返す。

 そんな二人の様子を見ていたシリルは、吹き抜ける風に若干の湿り気があることを感じ取り言葉を発した。


「雨も降りそうですし、そろそろ行きましょうか」

「ん……そうだな。雨に濡れたくねえし」

「わかった」


 シリルの言葉に渋々同意し、リリナから離れる二人。

 踵を返そうとするシリルに、リリナは咄嗟に声をかけた。


「シリルちゃん!」

「は、はいっ」


 突然かけられたリリナの声に驚きながらも、ゆっくりと振り返るシリル。

 そんなシリルに向かって、リリナは笑顔で言葉を続けた。


「シリルちゃんが困った時はいつでも助けにいくからね! 魔法少女は義理堅いのだ!」


 リリナはえっへんと胸を張り、何故かドヤ顔で言葉を発する。

 そんなリリナの言葉を受けたシリルは、本当に嬉しそうに笑いながら返事を返した。


「ふふっ……はい! ありがとうございます!」


 シリルは片手を差し出し、リリナと握手を交わす。

 そうして今度こそ、シリル達は次の街に向かって歩き出した。


「またなリリナ姉ちゃん! がんばれよー!」

「おう! あんたらも頑張ってなー!」


 リリナはにいっと笑いながらぶんぶんと手を横に振り、シリル達を見送る。

 シリル達はそんなリリナの声を背中に受けながら、次の街に向かってゆっくりと歩みを進めていた。






「―――あれっ!? そういえばリリナさんのフルネームって……」

「ああ、リリナ=ア・ラ・モードだろ。自分で名乗ってたぜ」


 レウスは急に大声を出したシリルに疑問符を浮かべつつ、頭の後ろで手を組みながら返事を返す。

 そしてレウス同様頭に疑問符を浮かべたリセは、首を傾げながら質問した。

「お姉さんの名前が、どうかしたの?」

「あっひぃえ!? な、なんでもないです!」

「???」


 シリルはぶんぶんと手を横に振り、慌てた様子でリセへと返事を返す。

 リセは頭に疑問符を浮かべながら、反対側へと首を傾げた。

『そっか。リリナ=ア・ラ・モード……魔術協会ナンバー7の実力者さん、ですよね』


 確かにそれならば、あれほどの実力を持っていたことも頷ける。

 これまで気付かなかった自分を責めたシリルは、小さく「うぅ」と唸りながら頭を抱えた。


「なんだよねーちゃん、大丈夫か?」

「あたま、いたいの?」


 レウスとリセは心配そうにシリルの顔を見上げ、言葉を紡ぐ。

 そんな二人の言葉を受けたシリルは、ぶんぶんと顔を横に振りながら返事を返した。


「あっ、い、いえ! なんでもないですじゃ!」

「「???」」


 動揺したシリルの様子を見たリセとレウスは、頭に疑問符を浮かべながら首を傾げる。

 そんな二人の様子を察したシリルは、少しだけ頬を染めながら前に向かって歩みを進めた。


「ナンバー持ちの魔術士が集まる機会があったら、今度こそご挨拶しなくちゃ。……うう、ちょっと気まずいかも」

「「???」」


 シリル本人は自信がないとはいえ、一応同じナンバー持ち魔術士として挨拶が出来なかったことを悔いてがっくりと両肩を落とす。

 リセとレウスはそんなシリルを見上げ、相変わらず不思議そうにその大きな目を見開いていた。






「いっちゃったか~。また会いたいなぁ」


 リリナは頭の後ろで手を組みながらくるっと振り返り、祖国であるフェリアレールへ戻って行く。

 そしてその道中、リリナは重要な事を思い出した。


「あーっ!? しまった! 私が魔術協会ナンバー7だって自慢するの忘れてた!」


 リリナはガニ股で頭を抱え、ぶんぶんと顔を横に振る。

 どうやら本気で忘れていたようだ。


「あーもー、ちくしょう! 自慢したいなぁ! あ、ちょっとそこのボク! 私って凄い魔術士なんだぜ!?」


 リリナは通りがかった商人の子どもに向かって、突然声をかける。

 商人の子どもは訝しげな表情をしながら、リリナに向かって返事を返した。


「うっそだー! どう見たって痛い姉ちゃんじゃん!」

「誰が痛い姉ちゃんだこらぁ! くそがきゃー!」


 突然暴言を吐かれたリリナはプンプンと怒り、少年に向かって言葉をぶつける。

 少年は「べーっ」と舌を出しながら、フェリアレールに向かって走って逃げて行った。


「待てやこらぁ! 絶対謝らせるかんな!」

「ばーかばーか! フリフリおんなー!」

「くっそ、腹立つぅー!」


 リリナはプリプリと怒りながら少年を追いかけ、フェリアレールに向かって戻って行く。

 その表情にもう寂しさはなく、どこかすっきりとした風のような印象を受けた。

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