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いとこは聖女様。  作者: 空気鍋
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悪夢の終わりと破滅の始まり4

長く放置して申し訳ありません。

体調が悪くて打ち込みをする余裕がありませんでした。

まあ、精神的に追い詰められる事が次々と出ていたのが原因なのですが。

幸せは重ならないのに不運と不幸は重なるんです。

前話、前前話も更新しなおしました。

よろしければ見て下さい。


これからも更新が止まることがあると思います。

読んで頂いている方には申し訳ありませんが打ちきりにするつもりはありませんので最後まで付き合っていただければ幸いです。


読んでくださり、ありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

m(_ _)m

今日も熱い日だった。

お昼過ぎに俺の家に歩いて来た苺さんはハンカチではりずタオルで汗をぬぐって司が制汗せいかんスプレーをふりかけている。

今日の司は何時いつもの脇横わきよこいている刺激的しげきてきな服ではなくコットン素材とか言う生成きなりの短衣と膝丈ひざたけのハーフパンツだ。あの刺激的な服は神殿で着ている“聖女”の制服の様なものらしい。向こう側では司を直視ちょくしする男性陣は神殿長、大神官、国王くらいで常に会う訳でもないから気にしていなかったが俺と会う様になってから用意したと言っていた。

言われた俺は視線をそらして


「今日も熱いな。」


と言うしかなく。イヒヒッとイタズラっぽく笑う司と威圧感いあつかんした蒼井さんを誤魔化ごまかして……誤魔化せていればいいな。

ともかく、朝、会った時は、いかにも空元気だった司も俺にしがみついて二度寝をした後は本当に元気になった。今スプレー缶を苺さんに向けてキャーキャー騒いでいる司は朝にふらついて歩いていた本人とは思えない程、元気だ。


単なる寝不足に思えたんだけどな。けど、それなら蒼井さんがあんな顔で司を見てないだろうし。


眉間みけんまゆを寄せ不安げな怒っているような心配した顔の蒼井さんは俺を刺すような目付きで見たから、たぶん俺が原因なんだろう。俺には自覚じかくがないが今まで司と苺さんに色々《いろいろ》やらかしていたのは家族との会話で気づいた。気づいていないからといってゆるしてもらえない事もあるという事にも気がつかされたが。

二度寝で活力かつりょくちた司と日射しの強さと熱でだるくなって、ほとんど抵抗していない苺さんを見ながらホッコリした時、頭の後にかたとがったものが刺さった。

痛いなんてもんじゃない。

イヤな汗が出てきて奇声をあげて頭を抱える。


「フオォーッ! フオォオオォッ!」


突然、奇声をあげて頭を抱えた俺に騒いでいた司と苺さんも、俺と同じようにホッコリしていた蒼井さんも驚いて動きが止まり。俺といえば痛さのあまりに昔、流行はやった芸人の様に叫んで。


「何を見ていたのよ。いやらしい。」


そんな俺に吐き捨てるかのような声が。


「な……七歌? お前……。」


痛みの原因は妹だった。

七歌は高校を早退してまで話し合いに参加してきたのだ。今は全員分の飲み物と軽く食べるものを四角いお盆で運んでいる。つまり、お盆の角で俺の頭をどついたのだろう。それほどの勢いで角を突き刺したのに飲み物が溢れていないのは、いっそのこと見事と言うべきか。


「……てか、死ぬわっ! そんなとこで撲ったら運悪けりゃ死ぬわっ!」


思わず掴みかかろうとしたが七歌は、お盆を盾に距離をとる。


「大丈夫よ。生きているじゃない。……血が出たのはやり過ぎたけど。」


七歌の恐ろしい言葉に患部に当てた手を目の前に。

真っ赤に染まっていた。


「あ、あ、ああ、ああ~っ! おお兄ちゃぁんっ!」


良かった。司が帰って来ていて、本当に良かった。




流血騒ぎの後はなごやかなお茶会……とはいかず、俺は七歌の


「あ~、ゴメンね。」


軽い謝罪しゃざいに怒りをおさめることが出来ずに立ち上がりかけ、司に腕を掴まれ座り直した。血だらけになった俺を蒼井さんが少し嫌そうに生活魔法で綺麗きれいにしてくれて司はうれしげに治癒魔法をかけてくれた。おかげで見た目は何事も無かった中、俺一人が激昂げっこうしている。

今、俺達はリビングのローテーブルを囲む様に置かれたソファに座っているのだがソファは二人がけソファ、一人がけソファ、二人がけソファになっていて、一人がけソファに蒼井さんが座り距離を置いて俺達を見ている傍観者ぼうかんしゃの位置、司は俺と同じソファにいて共感者きょうかんしゃの位置、苺さんは俺の向い側の二人がけソファに座っていて糾弾者きゅうだんしゃの位置にいた。

七歌は飲み物と食うものをそれぞれに配りおえ、俺の隣で立っている。部外者とも言い切れない中途半端ちゅうとはんぱな位置の七歌は頭の傷を司に治してもらった俺をみやり俺の隣、司の反対側に無理矢理座ってきた。


「だから、悪いって言っているでしょう? しつこいわよ。」


俺を毛嫌けぎらいしていた七歌が狭い二人がけソファに座っている俺の横に無理矢理、入り込む。驚いて固まった俺に鼻を鳴らして七歌は言った。


「……本当に悪いって思っているのよ? いくらなんでもやり過ぎたわ。」


常にないしおらしさに、かえって俺の警戒心が刺激される。半眼で睨む様に七歌を見ると、七歌は肩をすくめてみせた。


「怒りのあまりに、つい、強くいっちゃって。司がいなければ困っていたわ。司、ありがとう。」


そして、七歌は悪魔じみた笑顔をつくり


「けどね? あんたってば司を視姦しているのだもの、あたしだって、ね? 」


分かるでしょう? と言われて思わず、はあ(しかん?)? と答えたが。


「いくら司の胸が魅力的な大きさでも? 司の保護者みたいな人と仮にも彼女と家族であるあたし達の前で、あれは無いわーって思ったら、つい。」

「な、なにをいってんだ、おまえ。」


違うっ! 俺は純粋じゅんすいに司と苺さんのキャーキャーしているのをでていたんだ。しかし動揺どうようした俺は、上擦うわずった声をあげてしまった。いかにも本心ほんしんてられた事をかくそうとして隠しきれていない、そんな風に見える声を。


「直樹?」


向い側で顔は笑顔の苺さんが、ふうーん、そう。とでも言いそうな冷たい目付きを向けてきた。


「直樹君?」


胃がキリキリ痛む様な威圧(プレッシャー)が蒼井さんから向けられる。


「ち、ちがう。ほんとうだ。しんじてくれっ。」

「へぇー? そうなんだ? ……フフン。」


二へェと笑う司は苺さんに胸を張った。


「…………な、お、き?」


司に何かを言い返そうとした苺さんだったが言葉に詰まり俺を睨んでくる。

何故か、やけに機嫌が良くなった司とどんどん温度の下がっていく苺さんの目付き。岩も砕き吹き上がるプレッシャーを向けてくる蒼井さん。面白そうに見て猫が喉を鳴らすような笑い声をあげた七歌。

俺の頭の中に父さんが言っていた言葉が浮かぶ。


女が本気になったら男は勝てない。


…………勘弁かんべんしてくれ。





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