誰かの他力本願と自己責任1
青く輝いていた球体があっという間に褐色に濁りデットエンドとカタカナの文字が浮かび上がった。これで5回目になるのに最高は1302年間という4桁まで。今回は特に早かった。黙って見ているだけでは上手くいかないと神託をバンバンだして文化レベルを向上させたのまでは良かったのだけれど、いつのまにか細分化した国同士が戦争を始めて最後には大量殺人兵器の撃ち合いで滅亡した。
データ的には四十六億年は持つはずなのに私がやると即効で終了になる。
「♪ ど~してすっぐにぃおっわるっかな~♪」
節をつけてみるが5回連続、短時間での失敗は心に刺さった。
「♪ な~んでいうこっときっかないっかな~♪」
人類が生まれると急激に“その時、歴史は動いた”するのに、動きすぎて“その時、歴史は終わった”してしまう。
今回も私が必死に神託を出して破滅させないようにしていたのに神託を無視しちゃうんだもの。結局、カガクという魔法を撃ち合って世界ごと消滅。私がステイタスを高く設定した神聖帝国の言う事を黙って聞いていればいいのに勝手に戦争を始めて勝手に滅亡するのだもの。
1回目はある国だけに神託を出して世界統一を果たしたものの、すぐに魔法の誤用で、ボン。2回目は全ての国に神託を出してのだけど互いに争って、ボボン。3回目には神託は出さずに気象条件だけを変えていたらいままでの最長記録になったわ。だけど何故か暖かい筈の南半球に寒波が押し寄せて、北半球が砂漠化してボボボン。この時の球体は上が褐色、下が真っ白。間は常にもの凄い風が吹き荒れる訳の分からない状態になったわ。それでも頑張ればいけるんじゃないかな? とは思ったけど人は思っていたより弱かったみたい。
4回目は人を強化して気象条件を変えてみたんだけど……。個人個人が強いせいか群れずに、つがいを作って子孫を残す事なく、あっさり滅亡。その後は天敵がいなくなった動植物が覇を競いあう種の弱肉強食が始まり、おっかない生き物や植物が生まれ、また理由の分からない寒波と熱波が襲い全滅。5回目にカガクという魔法を与えてリーダーになる国を作り上げ神託により誘導して……上手く行くはずだったのに……いままでで一番悲惨な終わりだったかもしれない。
「♪ だぁれか? だぁれか? がんばるわたしをってつだぁって♪」
仕方がないので6回目のシミュレーションを始めるためにデータベースを作り直そうと球体に向きなおる私に
「まてまてまてまて、主は何をしておるのか分かっておるのか。」
隻眼の老神がこめかみの辺りを指で叩きながら低い掠れた声で言った。
「……? 地球をベースにしたシミュレーターによる仮想世界創造ですよね? 私の運営方法に問題がないか調べる為に何回か試してみる、と仰ったのは大神ですよ?」
「わ……分かっておるのか…………いや? 分かっていても理解していないのか? むう。」
「分かっていますよ? だから何回もシミュレーションしてるんですから。」
そう、私は世界を創造する時にある程度完成された地球をベースにしてデータを弄りコピー、ペーストを繰り返して作った。ところが元のデータには無い魔王や魔物が次々表れ私が思ったような世界が作れなくなってしまったのだ。おまけに作って数十年しか経っていないのに世界が綻び始めている。それで本格的に世界の補完作戦をする前に私のなにが悪いのかを見てみようという話しになったのだけど……。
老神は私を止めた後、何かを我慢するように目を固く閉じた。細く均整の取れた息子神は離れた場所で似たような姿になっている。




