戸惑いだらけのメインパート18
「とりあえず、早く腫れを何とかしないと。もうすぐ直樹の家に行かなきゃならないんだから。」
腫れた目蓋を冷やしながら私はシワだらけになった勝負服を悲しい気持ちで脱ぐと普段着よりはましな服に着替えて気合いを入れた。
今日は向こう側を説得して彼氏を黙らせて同行に承服させてフラフラしている未来の旦那様に“喝”を入れなきゃ。
今日の予定をざっくりと頭の中に浮かべて……ため息が出てしまった。
まったく、私だけこんなに苦労して理不尽だわ。
苦労するのは我慢するけど理不尽なのは我慢出来ない。直樹の気持ちが離れているのが分かっているのに、なんで私……こんなに苦労しているんだろ……。
しかし直樹に着いていかなきゃ後悔するのは間違い無い。それが異世界だとしても。
そして私は深くて深いため息をついた。
俺が目を覚ましたきっかけは話し声だった。
囁く声は二人分で何かを言い合っているのが分かった。
「こう何回もだと、そういう趣味にしか思えないわね。」
「……お兄ちゃんのばかぁっ。」
起きたての頭はモヤがかかったようにはっきりせず目を開くと見馴れた天井が。カーテンを引いていない窓からは夏の強い陽射しが入ってきていて頭の中にあったモヤを一気に消し去った。
脳ミソが覚醒モードになり昨日の父さんが怒って風呂を出ていった後を思い出した。俺は風呂に入りながらずっと“考えて”いた。
‐俺の彼女は苺さん。司は“従弟”。七歌は妹で俺を否定するのが楽しいらしい。
だが父さんに言わせるとそうでは無かったようだ。
「それにしても不快ね。こちらに来たらいきなりですもの。いい加減にしてほしいわ。」
「……うぅっ。……お兄ちゃんのバカ。」
父さんが何を言いたかったのか。七歌はなんであんなことを言ったのか。
「寝たふりをしながら私達の様子を伺っている所なんて更に最低よね?」
「ふえっ!?」
そして、なんか俺の寝たふりがバレていた件……。イヤ、違うんだ。いつ、起きるべきかタイミングをみていたんだ。見せていた訳じゃない!
「お兄ちゃん……。お兄ちゃん、の。」
つ、司?
「お兄ちゃんの大バカヤロー!」




