表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
いとこは聖女様。  作者: 空気鍋
13/138

長めのプロローグ1 3

俺は両手と両膝を床につけ項垂れている。

したくてしている訳じゃない。

ただ、立つ気力が無いだけだ。

俺は年下の女の子に嵌められ家族の前で自分の性癖を暴露したのだ。しかし、女の子を復讐にかりたてたのは、過去の俺が原因だった。過去の俺が“アイツ”のゲームキャラを取り上げネカマをやらせて周りの反応を楽しんでいた事が全てであり…。

俺の自業自得だった。

俺の前に昔の俺がいたら首根っこをつかんで振り回してどぶに叩き落としてやるのに。それだけじゃ足りん。こ・の・う・ら・み・どうはらす・べ・き・か。

それにしても、この嫌らしいやり方“アイツ“がいるみたいだ。もう俺には”女の子(ゲームキャラ)“が”男の子の司(アイツ)“にしか思えない。

それくらい衝撃的だったんだよ…。

床に崩れこんだまま動けない俺の頭を誰かが撫でた。顔をあげると“女の子(ツカサ)”が優しく撫でている。

プスー。ねぇ、今、どんな気持ち? ねぇ、どんな気持ち?

しゃがんで俺の頭を撫でる”女の子(ツカサ)“は。

勝ち誇った顔で。

語りかけて。

俺の中で何かが燃え上がった。

雪辱は果たす。

いきなり立ち上がった俺を驚いた顔の“女の子(アイツ)”がしゃがんだまま、見上げた。

俺は負けない。負けられない。


「あー。あんたの本棚の裏にある薄い本。顔つきが子供っぼい(とししたもの)のばっかよねー。」

「ベットとマットの間の本は可愛い服、着た子(コスプレもの)よ。」

「直樹。父さん、トイレに、あんなふくよかな胸の女の子(きょにゅうもの)の写真集を隠すのは感心しないぞ。」


かの詩人オレは言った。

神は死んだ(かぞく は うらぎる)。と

俺は再び崩れ落ち床にうずくまった。


「凄いや、お兄ちゃん。みんな、お兄ちゃんの秘密、知ってるよ。僕、言うこと無くなったよ。」


もう、何も言わないでくれ。

虚ろに見上げた俺に輝く笑顔が降り注ぐ。

公開処刑終了おいたはダメよ

しゃがんだままの”女の子(ツカサ)“の笑顔プレッシャーに俺は項垂れた。

……俺、もう、泣いていいかな。

あ、……黒だ。


「…直樹は、この子が司くんで間違い無い、と思うんだね。」


父さん(クソおやじ)が、仕切り直した居間で問いかけてきた。俺はその言葉に頷く。


「このキャラを作った時の事はアイツ…司しか知らない。受け方、話し方も司と同じだ。俺はこの子は司にしか見えない。」

「お兄ちゃん…。」


俺がはっきり返すと司は目を潤ませて感極まった顔を向けてきた。


「あたしと同じで最初、信じてなかったけどね。」


何故か不機嫌な七歌の言葉にそう言えば、とジトっとした目になる司。


「それでは、司くん。君に何が有ったのかは分かった。次は、君がいない間の話をしよう。」


父さんは冷たくさえ聞こえる声で言った。司は軽く下唇をかみ、頷く。


「はい。お願いします。」


司は、今、覚悟を決めた、と自分では思ったろう。だが、覚悟を決めた、と思える程度の覚悟では、この先の話はついてこれない。

俺は七歌に目で合図を送った。

俺達で司を守るぞ。

七歌も頷いた。

当たり前よ。

そうして、司を心配そうに見る。

俺も司を見た。たぶん、七歌と同じ顔をしているだろう。

司は父さんの話を最後まで聞けるのだろうか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ