戸惑いと裏切りと12
前話で一部文章が抜けていたので追加しました。
おしゃれって疲れるの下りから貴族の挨拶が終わるまでの部分になります。
矢印から矢印までです。
よろしければご確認ください。
けど、おしゃれってそんな疲れる事を、起きている間ずっと続ける事だったんだ!
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けど、そんな苦労をしているって見えたらカッコ悪くて、おしゃれじゃ無いから隠している。隠しているけど、「これは会心!」って出来の時まで無関心なのは悲しいよね。
せっかく僕が
「今日の僕ってどうかな?」
ってヒント出していても、お兄ちゃんは
「何時もと同じだろ?」
……もう! 違うんだよっ?
何時もより髪の編み上げが決まっているよねっ?
前髪が綺麗に分けられて顔が良く見えるでしょう? お兄ちゃんと一緒にいる三郷野さんがショートヘヤとファンデーションで「輝く顔」を演出していたから僕も「透明感のある肌」を前面に出してアピールしているんだよっ!
お兄ちゃんにおしゃれってこんなに疲れるって言いたい。お兄ちゃんが、のんびり街中を歩いているとき、僕と三郷野さんがお互いのおしゃれ度をチェックして火花が散っているのを教えたい。それをしちゃったら隠している事がバレてカッコ悪いから本気でしたりしないけどね。
あ~あ~。たまには何も言わなくても褒めて欲しいな。女同士のおしゃれ度チェックって凄い厳しいから嫌になるけど、お兄ちゃんが「司、綺麗だよ」って言ってくれたら、それだけで僕は“魔王”どころか“女神”とだって戦い勝つ自信が湧くのに。
↑
貴族様の語りを聞き流しながら、僕はどうでも良いことをボンヤリ考えていた。
貴族の中でも位の高い公爵家の息子と話した翌日。
ホントならお兄ちゃんが会いに来てほしかったんだけど、僕のモヤモヤが赤谷の領館にいるはずの、お兄ちゃんを求めている。
僕のいる獣人のいる領都にいたくない人の受け皿となる町は、領都と馬車で三時間ほどかかる距離にあって、行き来が微妙にしずらいんだけど、僕達には“鏡”という移動手段が有るから、すぐだ。“鏡”を潜る時に、“女神”のガバガバセキュリティを思い出して嫌な気持ちにはなったものの、鏡の向こう側に着いてしまえば、そんなのは忘れてしまった。
男爵家という貴族の下から数えて序列一位な爵位に関わらず荒れ果てた領土は爵位に合わず広くて、広さに合った豪奢な領館は某お城の様にそびえている。
今、このお城……領館には赤谷と蒼井さん夫婦達。黄野さん緑川さんカップル。それにメイド長として橘さんが住んでいて、50室を越える部屋がある館内は人気が無くて寂しい。
紫さんは、ずっと秘密の関係だった第三王女様を迎える自分の家を領都にいつの間にか建てていて、通いで来ているのを見たことがあった。“英雄”の一人な紫さんに嫁ぐ王女様は、現国王が平民に産ませた庶子で母親とは別々にされて王女としての教育を受けるものの継承権は無く、平民の母親と暮らしたくても、王女の肩書きが有るからそれもできず、豚伯爵と呼ばれたポートプルー伯爵に嫁に出されるか、有力な富豪に出されるかといった、幸せになれないのが確約されていた王女様だった。しかし、それを知った紫さんが秘密裏に母親との橋渡しをして、数ヶ月に1か2回だけの橋渡しだったけど、それを繰り返している内に、いつの間にか恋人同士になっていた。そして王女様を娶る為にいろいろ王家と約束を交わして“魔王”を倒しに赴いている。
実は僕達の中で明確に“魔王”を倒すんだって意志が有ったのは、紫さんだけで僕達はこの世界がどうなろうとも関係無いって思ってた。そこに紫さんの必死というか、鬼気迫るってあんな事をいうんだろな。「うん」と頷かないと何されるか分からないって“説得”に仕方なく“魔王”退治に向かったんだ。
こうしてみると、なんとなく館内がフワフワで落ち着かないピンク色に染められているような気がする。何時もは気にならないその雰囲気が今日に限ってはバカにされているみたいで苛々した。
それを耐えてお兄ちゃんの執務室まで来たのに、肝心のお兄ちゃんはいない。お兄ちゃんの部屋には橘さんがいて、メイド服にエプロンという姿で、パタパタとはたきを振っていた。
軽く鼻歌が聞こえてくる。お兄ちゃんの部屋の扉は開け放たれていて、橘さんはよほど嬉しい事があったのか、珍しく作った顔じゃなく素の顔だ。
メイド長をしている橘さんは、街に住む獣人や貧民街にいた人を雇って、この部屋数50室を越える領館の維持、管理の全てを任せられている。そんな忙しい筈の橘さんが、お兄ちゃんの部屋を掃除しているんだけど、ちょっと紅くなって染まっている頬といい、上機嫌な様子といい、僕がこんなに近くに居るのに気づかない事といい、お兄ちゃんの私物を大事そうに扱っている事といい。そんな幸せそうな橘さんは一通り部屋を掃除し終わるまで僕に気づかなかった。
僕達の中で唯一、斥候をしていた感覚の鋭い橘さんが。
普段なら有り得ない。
それに、ずっとお兄ちゃんの部屋にいた橘さんは僕を見るなり、ビクッて凄い反応をした。
これも有り得ない。
まるで何か隠しているのがバレたみたいな態度。ドラマとかで良くあるよね、浮気をした人が浮気現場を見つかって取り繕うって感じのアレ。
あんな感じでワタワタし始めた。
僕を見たらすぐイタズラしてくる橘さんが、僕を見ても何もしてこないなんて。
絶対あり得ない。
モヤモヤしていたモノが真っ黒になって僕に染み込んでくるのが分かる。染み込んたモノは、ずっと我慢していた気持ちを僕の奥からえぐり出してきて、
「……気持ち悪い。」
小声で呟く。
「気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。」
小声で何回も何回も呟く。
そう、気持ち悪い。何も知らない子供を見るような目の前の女も、お兄ちゃんと一緒にいるあの女も、気持ち悪い。
「つ、つかちゃん? どうしたでござるか、悪鬼羅刹もかくやといった顔つきでござるぞ?」
ひきつる女の顔を見ていたくなくて、
「お兄ちゃん、どこ?」
ボソリ問いかけると、うつ向く。
「……。」
無言でため息をつく声がして
「んー、直樹殿でござるか? 直樹殿は大切な用があるらしく、向こう側に戻ってござるぞ。」
女の言葉にまた苛々……違う、ムカつく。吐き気がする位ムカムカして気持ちが落ち着かない。落ち着かないまま
「そっ。ありがと。」
きびすを返して帰ろうとする僕の肩を女が掴んだ。
「待つでござるよ、なんかおかしいでござるぞ?」
「うるさいっ!」
「つかちゃんっ。」
「うるさいっうるさいっ!」
肩を揺すって手を外して歩くと女が着いてきた。
なんか呼ばれているけど、叫び返して走って逃げようと思った時。
「これは……ナオキ殿と話でも、と思い此処に来ましたが、“聖女”様も声を荒げる事があるのですね。」
カツカツと足音も高くやってきたのは昨日ぶりの貴族様。昨日と同じように取り巻きを3人連れて歩いてきた。
僕は“聖女”としての顔を即座に作り
「はしたない所をお見せしました。」
ニッコリ微笑んだ。
笑っただけで取り繕える姿じゃなかったのは分かるけど、とりあえずそうするしか無くて、何時も以上の笑顔を作ってしまった。そんな僕の隣では、メイドの姿をしている女が黙って頭を下げている。この女は、貴族様に正体を隠してメイドとして接するのを止めるつもりは無いらしい。
「“聖女”様は、“ツカチャン”と呼ばれているのですか?」
爽やかな声をあげて顔立ちの整った金髪の貴族様が微笑み返してきた。なんか、白い歯がキラリと輝くような笑顔だったけど、逆にそれが笑いを誘うから止めて欲しい。
「親しい友人からはそう呼ばれています。」
とだけ返す僕に、貴族様は更に
「私も、お呼びしても?」
キラーン。歯だけじゃなくて顔が輝くような笑顔。
だから、笑っちゃうんだって。
「そうですね……“ルソラ”とお呼びください。」
悩む振りも早々に止めて、その呼び方は許さないと言葉の外で答える。それが意外なのか、やや固まった貴族様だけど体勢を立て直して
「それでは、私どもと共にお茶でもいかがですか? 王都からとびきりの物を持って来たのです。……君、用意を頼むよ。」
いまだにメイド姿の女が“英雄”の一人と気づかない間抜け様は、軽く他人の領館に勤めるメイドに言うと、僕の手を握ろうとしてくる。これは、よくある男が女をダンスとかに誘って歩く時の繋ぎ方だ。なんで僕がお兄ちゃん以外の人にそんな事されなきゃならないんだよ。
スッと手を外し、僕は
「メイド長、用意をお願いします。……そうですね、今日は天気も良いので中庭で楽しみましょうか。」
メイド姿の女に命令して、貴族様の先に立って中庭に案内する僕。
「はい、すぐご用意致します。」
貴族様の言葉には反応しなかったメイド姿……めんどくさいな……橘さんは、僕の言葉には即座に答え僕と逆に歩いていく。これから僕はお茶の用意が出来た頃、中庭に着くように遠回りしながら向かわなきゃならない。
お兄ちゃんに会いに来たのに僕、なにしてんだろ。
○○○
くだらない王都の噂話をしながら歩くこと数分。
まだ用意出来てないとは思いつつ、くだらなすぎて限界になった僕は中庭に来ていた。
このお城……じゃなくて領館には二つ中庭が有るけど今来た中庭は芝生と背の低い植物、で構成されている接客専用の中庭で、広さはさほどじゃないけど、その代わり数々の華が咲き乱れる。
ここはお兄ちゃんの妹、ナナカねーちゃんが担当した部分で華の勢いに少し落ち着かないのが特徴。ナナカねーちゃん的にも不本意だったみたいで庭の造り方を勉強し直すって言っていた。
そんな中庭に案内したら、もう橘さんは用意を終えて僕達を待っている。華の薫りに負けない紅茶の香りがフワリ漂う空間で、王都の噂話ではなく、この領の話が始まった。
うん、良かった。正直、どの貴族の娘が誰の貴族の息子と親しいかとか貴族の力関係を教えられてもどうでもいい事だからね。
それにしても貴族様が持ってきた紅茶は香りだけで味が薄いな。橘さんが入れ方を失敗したのかと思ったけど
「この茶葉は味が薄いんでござる。香りは良いからそれっぽく感じるのでござるが、味の判らぬ貴族が安いからと買っていくことから“貴族だまし”ってアダ名が付くくらいでござる。」
小声で耳打ちして、ストレートじゃなくミルクティーにしてくれた。まあ、紅茶の香りがするお湯からホットミルク味になっただけなんだけどね。
「それにしてもナオキ殿の手腕は建国の名宰相と吟われた方にも並びますね。あの手腕は是非とも国に欲しい。」
旨そうにお茶を飲む貴族様が、お兄ちゃんを褒めながらお兄ちゃんの引抜きを打診してくる。
「男爵領とはいえ広いこの土地を治めるのは、なかなかに難しく思います。この領の中心とも言えるいえる人かと思いますのでこれからもいて欲しいと考えております。」
引き抜き、ダメ。絶対。
そう答えるけど
「ナオキ殿ならば官僚ではなく、内務卿か財務卿から始まり宰相補かゆくゆくは宰相となっていただきたい物です。」
諦めない貴族様は国を動かす高官を出してくる。ただ、向こう側に居場所がある、お兄ちゃんが良い答えをするはずがない。
反論しようとした僕の言葉を遮り貴族様は更に言葉を重ねてきた。
「宰相には、花よ蝶よと育てられた美しい姫がいましてね。年の頃もナオキ殿と吊り合うのですがいかがですかね?」
イラッ!
お茶を飲んでようやく落ち着いてきていたのに、また苛々が募る。この貴族様は人を怒らせる事しか言えないの?
「その方がナオキ殿の目的には合っているかと思いますがね。一部の領での研究より、小さいとはいえ国全体を使えるとなれば研究のしがいもありましょう。それに男子に生まれて国を動かす機会を捨てるとは思えぬのです。」
だけど、貴族様の言葉に僕は反論が出来なかった。
確かにお兄ちゃんは内政ゲームが好きで、わざと弱い国から始めて強い国にしていた。そして、お兄ちゃんは大学の研究の為に水田と稲作を試している。貴族様の言葉は、お兄ちゃんがやりたがっていた事を後押しする言葉だから、僕は何も言えない。
口をつむぐしかなかった。
黙ってお茶をすする僕に
「ナオキ殿が宰相の姫を娶るかどうかはさておき、国に勤めるならば、住むところは王都になりましょう。ルソラ様は王都に居られればナオキ殿と何時でも会えることでしょう。」
グラリ。
視界が揺れた。
僕自身意外に思うくらい、貴族様の言葉は僕を揺さぶる。震える手が紅茶の入ったカップを持ち続けられなくて小さな皿みたいなソーサーに戻す。カップとソーサーが当たり軽い音が響く。
ニコリと笑う貴族様は嬉しそうに目を細め
「ルソラ様は“聖女”として名高い方ではありますが、私も公爵家の者です。神殿がルソラ様を欲しがっても、私が守って差し上げましょう。そうですね、まずは我が家敷に部屋をご用意致します。」
この世界の神殿は貴族には決して逆らわない。だから、公爵家の息子が言うならそれは絶対に守られる。それは公爵家に居候する限りは破られる事はなく、お兄ちゃんが出世していけば公爵家に守られなくても僕は“聖女”としてまた神殿に囚われるような事はない。
「ナオキ殿が国政を預り、ルソラ様はそれを支える。私もナオキ殿の友人として、妻と共に支える力になる事でしょう。」
お兄ちゃんが国に勤めると、自然とお兄ちゃんはこの世界で生活するようになる。この不便な世界でも、赤谷の男爵領みたいに、お兄ちゃんなら変えてしまえる。
「いかがですか? ルソラ様は私の庇護下にあると分かるように私と共に王都に来ていただき大々的な式典をあげましょう。ルソラ様が式典で誓えば私はナオキ殿を裏切る事は決してありません。」
お兄ちゃんがこの世界で暮らすなら、僕は三郷野さんが彼女だなんて認めない。
だってここは僕の世界なんだから。
視界が歪んでいく。僕は自分が座っているのか倒れているのか分からなくなって、そして頭の中はお兄ちゃんと一緒に暮らしていく事しか考えられなくなった。
だって、もう元の世界に戻れないし、お兄ちゃんに彼女さんがいるし、彼女さんが好い人で本当に奪うなんて考えられなくなったから、諦めていたんだ。
僕はこの世界で生きていくしかなかったから。
「ルソラ様とナオキ殿には確かな繋がりがある、それは私にも分かります。だからこそ、ルソラ様が私と共にナオキ殿の居場所を作れば、ナオキ殿も嫌とは言わない、そうではないですか?」
僕がお兄ちゃんの居場所を作る……。
それは新しい考え方に感じられた。そう、お兄ちゃんの居場所は向こうの世界にだけあるって僕は思っていたけど、それなら僕がお兄ちゃんの居場所を作れば、お兄ちゃんはこの世界にいてもおかしくないじゃないか。
ううん、僕がお兄ちゃんの居場所を作れば、お兄ちゃんは必ずこの世界に居てくれる。
「ルソラ様。貴女がナオキ殿の居場所を作るのです。私が御身の力となりましょう。」
貴族様……公爵家のアレクサンドという名前の使者は自信家の笑顔をしながら僕を見つめていた。
僕の前に片膝を付くようにして手を差し出している。この手を取れば僕とお兄ちゃんは一緒に暮らせ……。
ガチャンッ!
大きな音で僕は我に返った。手を伸ばしかかっていた僕は、ギュッと握ると胸元の戻して深くため息。
「申し訳ありません、粗相をいたしました。」
橘さんの声が聞こえて、それにあわせて小さな舌打ち。だけどそのせいか、ざわついていた気持ちも落ち着いてきた。
落ち着いてきた僕は、もう一度、大きく息を吐き。
このアレクサンドってのは毒だ。
そう、思う。この人をまともに相手をしてはいけない。少なくとも僕の手に負える相手ではないのは今、ハッキリと分かった。
ソーサーを手に持ち、だけどアレクサンドから逃げる口実も思い付かないまま、冷めた紅茶を見つめる。
「アレクさん、来ていたんですね?」
不意に聞きなれた声が中庭の入り口から届き、アレクサンドを見るのが怖くなってうつ向いていた僕は顔をあげた。入り口には、やや汗ばんだお兄ちゃんが軽く息を荒げて立っていて、僕とアレクサンドを一瞥すると足早に近寄ってくる。
「いや~、研究室に籠っていたもので申し訳ない。アレクさんが用事があると聞いて慌ててやって来ましたよ。」
ツカツカツカツカ。らしくない態度を取るお兄ちゃんは足音を響かせていつの間にか用意された椅子を僕の隣に動かして座る。
ふぅ、と一息。
僕がみているのに気づいてフワッと笑顔。
日だまりに溜まる猫みたいな顔のお兄ちゃんは、僕に軽く頷いて
「“聖女”様、アレクさんとのお茶会を邪魔して申し訳ありません。」
謝った。
「アレクさんもすいません、不躾なもので……。」
僕だけでなくアレクサンドにも謝ると、橘さんが入れてくれた紅茶をすする。
「……そうだ、ナオキ殿。私が君に話したかった事を伝えることにしよう。」
お兄ちゃんが来て、明らかに空気の変わった“お茶会”にアレクサンドも話題を帰ることにしたみたいだ。冷めた紅茶を入れ直したものに交換したアレクサンドは、また爽やかな笑顔で
「実は、ナオキ殿には、この国の官僚をやってもらいたいのですよ。この国は魔王との戦いにおいて最前線の国として補給物資を戦いに赴く戦士達に配っていたのですが、それが為に今、困窮の道を進んでいるような状態です。」
クッと紅茶を飲むアレクサンドは勝利を確信した笑みを浮かべていた。
「しかし、この男爵領を見て私はナオキ殿ならば我が国を救えると確信しました。どうでしょうか、ナオキ殿。私と共に王都に来ていただけませんか。」
僕を王都に誘ったのと同じく、お兄ちゃんも王都に連れていこうとする。計画は三郷野さんと蒼井さん、紫さんが主体になっていたけど、指揮官のお兄ちゃんが王都に行ってしまえば領再生の計画が停まってしまう。だから僕はお兄ちゃんがいなくなるのを阻止しなきゃならないんだけど、けどもし、もしも、お兄ちゃんがこの提案に頷いてくれたら、僕はお兄ちゃんと一緒に王都に行こうと思う。赤谷や蒼井さんには悪いけど、お兄ちゃんの傍にいたいんだ。
そう、考えて僕は、お兄ちゃんがなんて答えるのか固唾を飲んで見つめると、お兄ちゃんは軽く首をかしげてアレクサンドからの勧誘に……。




