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いとこは聖女様。  作者: 空気鍋
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悪夢の終わりと破滅の始まり35

すみません。

投稿が遅れました。


あと、あけましておめでとうございます。

今年には終らせるつもりですので最後までよろしくお願いします

“勇者”として“魔王討伐”を成し遂げた“英雄達”に褒賞で渡された領地は。


「かつて魔王軍に滅ぼされた港町」

「塩を撒かれた雑草も生えない土」

「殺された領民が夜な夜な徘徊する地」


……大陸を救ったと言って良い筈なのに、これは一体なんだろう。こんな土地をあてがいながら、この国の王様は今年中に、正確には春に領地を与えたから半年程度で荒れ果てた、この土地から領地に相応しい収穫を得ろとまで言ってきた。国からの援助は無いが自腹で領地を復興させるのが“貴族の責任”であり、“英雄”としての務めである。そんな事を言っていたらしい。そして、復興出来なければ“英雄”の称号も“男爵”という肩書きも剥奪する……そうだ。

こんなふざけた王様の命令も、飲まざるを得ない理由は“聖女”の称号を持った司が“神殿”に囚われてしまったからだ。司は“魔王討伐”後、“女神”と名乗る存在に、元の世界に戻れる確約を得て浮かれて街を歩いていた時に、“大神官”とか言うヤツに騙され、心情に縛られて自ら“神殿”に囚われた。

驚いたのは司以外の“英雄達”。司を“神殿”から救い出すには


「英雄の名を使った力づく」

「神殿より権力のある存在になって司を救う」


二通りしか考えられない。しかし、“英雄”の影響力で司を助けるにはデメリットが大きすぎた。この大陸では“魔王軍”による侵攻で滅んだ国も滅びかかった国もある。そんな国では今も侵攻された後の苦しみの中で貴賤無く必死に生きていた。“神殿”はその人達の心の支えになっていたのである。その支えが大陸を救った“英雄”の中でも1、2を争う人気のある“聖女”(ルソラ)を“騙し“神殿”の権力争いと権威を高める為に使っていると分かってしまえば、この国の“心の支え”が折れて砕けてしまう。

“魔王”を倒したものの、“魔王軍”は健在でかつての“魔王軍四天王”の生き残り3人が支配下に置いた滅んだ王国内で次代の“魔王”を目指して、骨肉の争いをしている。つまり、大陸を戦の渦に叩き落とした“魔王軍”の脅威は一切(いっさい)失われてはいない。いつ、次代の“魔王”が侵攻を再開するのか分からない中、“支え”のひとつである“神殿”の名に傷をつける真似は出来ない。“英雄”の名は大きいものの、長い年月をてきた“神殿”にはかなわない。

ありていに言って政治的判断(大人の対応)にはなるが、司が頭を下げてのお願いに、他の仲間も頷くしかなく。出来るのは“魔王討伐”の褒賞として“貴族位”を受けて“神殿”から連れ出す事だけだった。しかし、これも目論みが外れ


「名誉爵位と言って良い下位の爵位、男爵位」

「しかも男爵になったのは“勇者”の赤谷だけで、他の仲間は準男爵という、豪商や大農家が授ける紛れもない名誉爵位」

「更には神殿にいる“聖女”の司は平民のまま」


この国以外では低くても伯爵、条件付きで侯爵。辺境伯として領地を自由に出来るなんてものも有った、まさか貴族爵位の端の爵位しかこないなんて考えられなかった、と紫さんは言っていた。

確かに、大陸を救った“英雄”に相応しい対応ではない。領地にしても男爵領にしては広くはあるが大半は荒野になっている訳だし。この歪んだ褒賞は“神殿”と、この国の貴族達の横やりによるもので、司は俺に何も言わないが


「貴族達の中で権力のあるポートプルー伯爵という人が“聖女”の称号をもつ司を夫人に据えることで国主に成り変わろうとしている」

「ポートプルー伯爵は国に大きな貸付金がある上に貴族達にも貸し付けをしていて神殿にも多額の寄付をしている」


つまり、豚伯爵のあだ名をもつポートプルー伯爵が司を妻にしたくて“神殿”や“貴族”を動かし国王を脅した結果だという。ポートプルー伯爵の娘が言っていたから間違いは無いだろう。

蒼井さんや紫さんもその事には気づいている。俺が司に内緒で蒼井さんと話をした時に


「仕事をしていれば、似たような目には、あうものよ?」


とケラケラ笑って言われたが、こんな理不尽が許される世界って……。

司がいる世界は、俺がいた世界とは違っていた。そんな世界に俺は飛び込むつもりだ。理不尽に耐えて元の世界にも帰れず仲間からも離れて暮らす司の“精神安定剤”になるために。


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