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【書籍化】お飾り妻アナベルの趣味三昧な日常 ~初夜の前に愛することはないって言われた? “前”なだけマシじゃない!~  作者: 重原水鳥
第二章 ラングストン女子爵アナベルの新しい日常?

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【44】悩み事は無限に湧く

 会場。招待客。それらが定まったところで、さあ次は他の問題である。


 問題三つ目! 提供する料理!

 味が美味しいのは大前提! 量も見た目もいる!

 でもここに全てをかけれるほどの予算はない。


 問題四つ目! 会場の内装!

 外の庭から廊下から会場内まで、カーペットや壁に飾る物やその他が全て家主のセンスが問われる!

 センスがないとなると一気に噂が広がる事になるだろう。怖い。


 問題五つ目! 出し物!

 必須ではないらしいけれど、それとなく参加者を楽しませる出し物をすることが多いと聞いて頭を抱えた。そもそもパーティーの経験が無さ過ぎてそんなの知らないとなった。でもデビュタントを始め、いくつかのパーティーでは音楽を聞いたりする時間もあった事を思い出してしまい……良い案が何一つ出ません誰か助けて。


 最終問題私の服装――は、唯一なんとかなっている。良かった。悩み過ぎて私の頭がおかしくなりそうだったけれど、以前メラニアとライダー夫人のご協力もあったから、これだけは既に解決している。良かった。


「やはり主な問題は料理、内装、出し物ね……」


 会場はこの屋敷。招待客については、現在実家の両親に親戚について問い合わせ中。それをのぞくと、参加者は大分固まってきた。


「ライダー侯爵夫妻が来られるのに、手を抜いた料理なんて無理だわっ」


 侯爵家から独立したような形なのに、私がさんざんなパーティを開けばきっと、侯爵夫妻の顔に泥を塗ってしまう。

 とはいえ……。


「私はそんな美食家でもないのよ……」


 以前よりは多少、質の良い物が分かるようにはなったと思う。紅茶などは特にそうだ。

 だが全体的に見て、味覚というのはやはり幼少期の影響が大きいようで……未だに、本当に美味しい料理、なんてのが分からない。


「内装は……ジェロームやジェマから、持っている物が過剰にならない程度に配置をすれば良いと言われているけれど……」


 それも簡単ではない。

 だって自分でいうのはなんだが、現在の私の絵画や彫刻その他のコレクション、かなりの数があるのだ。現在この屋敷の空いている部屋の大半は、コレクション置き場になっているのだ。


「やっぱり、メインを決めないとあれもこれもで纏まりがないわよね……?」


 そして何より。


「出し物って何をするの……? 分からないわメラニア!」

「急に助けてって手紙が来たから何事かと思ったらまだそこで話し合ってるの!?」

「だって……中々連絡が来ないから……授与も、もっと先かなと思って……」

「仕事は生まれた瞬間に出来る限り処理した方が良いわよ。後から後から降り積もって身動き取れなくなる前に」

「ウッ」


 メラニアは実感の伴った言葉でそういった。私は言葉が刺さった胸を抑えながら、急遽屋敷に呼び出してしまったメラニアに縋る。


「でも何も浮かばないわ。コレクションを展示するのではだめ?」

「まあ、貴女は絵画のコレクターという側面もあるから悪くはないでしょうが……やはりどこかの歌手でも呼んで歌ってもらう方が無難でなくて?」

「どこかって、どこに……?」

「アナベルが普段行っている劇団に頼んだりしたら?」

「そ、そんな事出来ないわよっ!」

「なぜ?」

「だ、だって。抱えている公演が沢山あるでしょう。私のような一貴族のパーティーにわざわざ来てくれるとは思わないわっ」

「駄目かどうかは相手に決めてもらえば良いじゃない。どこかに声をかけて、断られたら別で考えればよいのだし……それこそ、今の貴女には相談できる相手がいるでしょう? ライダー夫人とか、ブロック館長とか」

「そ、それは……ライダー夫人にはついこの間もご相談したの。何度も何度もお時間を頂くのは申し訳ないわ」

「なら館長ね。館長もそのあたりの伝はあると思うわよ?」

「そうかもしれないけれど……」

「はいはい。もじもじするのは後でして。ともかく、歌手は連絡を入れてみなさいな。あちらからしても、自分の歌を普段劇場には来ない人にもアピールする良い機会になるわけだから、意外と大物が歌いに来てくれるかもしれないわよ?」

「……分かったわ」


 懇意にしている人は特にいないし、メラニアの言うように有名な人は期待出来ないだろうが……確かに、少なからずメリットもあるし、誰かしらは来てくれるだろう。あまり期待が過剰にならないように、会場の大きさとかも付け加えておいた方が良いだろうか。


「アナベル様」

「あ。そうだったわ」


 ふと、後ろに控えていたジェマが小声で私の名前を呼ぶ。それで思い出した私は、彼女が手に持っていたお盆の上の手紙を手に取った。

 そしてそれを、メラニアに渡した。


「はい、メラニア。これ、私のお披露目パーティーの招待状よ。是非旦那様やお義母様と来て頂戴」

「まあ、ありがとう。でも本当に大丈夫かしら? 私たちは平民よ?」


 確かに、他の招待客の中には、平民が客として来てる事に違和感を感じる人もいるかもしれない……けれど。


「私が一番懇意にしている商人だもの! それにそんな、堅苦しいパーティーにはならないと思うわ。多分一番身分が高いのがライダーご夫妻になるとは思うけれど……」


 最初のころはあまりに上位貴族! という圧力でこちらが縮こまってばかりであったが、ライダー夫人やライダー侯爵は怖いところもあるものの、優しい人たちであった。


(私が元夫と普通の夫婦になれていたら……きっとライダー夫人とは良い嫁姑になれていたと思うのよね)


 それは、思った所でもうどうしようもない話だ。


 まあそれはさておき。あの方々はパーティー会場にメラニアやメラニアの婚家の方々がいても、大して気にされない。

 ご自分方が開くパーティーには呼ばない相手だとしても……パーティーを開くのは私なので。

 招待客についてご相談した時も、私が今後関わるような相手を呼べばよい、とおっしゃってくださっているし。


「私もあまり、下手な背伸びをして招待客を集める予定がないから……メラニアにとっては大して旨味のないパーティーかもしれないけれど」

「まあ! 夫からすれば侯爵家に挨拶が出来るだけでとんでもない事よ」

「そうだと良いわ」


 ショーン様にはとてもお世話になったから……少しでも役立てるとうれしいわ。


「それと、エディソン伯爵家にも招待状を出したいのだけれど……大丈夫かしら?」


 恐る恐る問いかけると、メラニアは目を丸くした。


「私の実家に? やだアナベル。大丈夫はこちらの台詞だわ。そこまでしてもらって良いの?」

「エディソン伯爵家はメラニアのご実家だし……私も大してご挨拶した事はないけれど、メラニアのご両親やお義兄様がよろしければ、来ていただきたいわ。ただ、殆ど関係がないような状態で招待状を出して良いものか分からなくて……」

「全然大丈夫よ! お父様たちには一言伝えておくから、是非送ってちょうだい」


 メラニアの言葉にホッとする。

 これで……これで少しは招待客の枠が埋まる……!

 私の親族が絶望的でも、まだマシだろう。


「会場OK。招待客はまあまあ良いわ。出し物は要連絡。服は問題ないでしょう? ……はあ。料理と内装、どうしたら良いかしら」

「テーマを軽く決めたらいいじゃない。例えば森の中とか?」

「森。森ねえ……なるほど……」

「あくまで例えばよ。或いはかっこよくするとか、ふわふわさせるとか、こう、方向が決まれば内装はすんなり行くんじゃない? アナベルが今したい、好きな物でまとめても良いし……あるいは、成りたいイメージでいくとか。ああでも、貴女の事だし、さっき自分で言っていたように、無理をした背伸びをしない程度にまとめておけば良いんでなくて?」


 メラニアの言葉に、私は頷いた。


「……そうね。今日はありがとう、メラニア。忙しいのに呼び出してしまって」

「構わないわ。ドロシアーナを今後もどうか御贔屓に、って事で」

「ふふ、そのうちまたドロシアにも会いに行くわと伝えておいて」

「ええ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] お披露目会楽しみが増し増しになってきた! アナベルさんのソワソワをみてこちらはワクワクが止まらんですよ!! 劇団の人たち喜ぶだろうなぁ 友人もドレスデザイナーも画家も館長も 癖ありの面白…
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