敵の実力を確認しよう!!
「セイルークは上空へお願い!」
「キュキュ」一鳴きし、走り続けるヒポポの頭の上で羽を広げるセイルーク。
その皮膜が風をはらむと、セイルークが体を横に傾けるようにして落ち、一瞬私の目の前から消える。
すぐさま上昇に転じたセイルークが私たちの横を通りすぎ、天高く上っていく。
敵の姿が、私にも見えてくる。
──行軍は規則正しいな。指揮はいきているのか。これは厄介かもしれない。操られているとはいっても、まるでモンスターのようになってしまっている訳ではないのか。
前方に見えるのは、明らかに自国の軍部の軍人たち。
魔法銃を携えた歩兵が先頭のようだ。錬成獣を騎獣にした騎馬兵種の一群も見える。
──騎獣は牛型か……。突進力が侮れないな。うん? あれ?
「ロア、見えるかな? 装備が一部無いものが多くないか」
「うん。多い。そこ、何か生えてる」とロア。
「あれは、真っ黒なキノコか! もしかして前に襲ってきたモグラモドキと同じ?」
「そう、みたいです。ルスト師。あのキノコで操られているみたいです」とアーリが未来視の魔眼を発動させながら教えてくれる。
「なるほど。キノコが大きすぎて金属鎧だと入らないのか。それは朗報かもしれない」
「敵の錬金術師はローブの下にキノコ」と今度はロア。
装備がしっかりしている相手を透視の魔眼で確認してくれていたようだ。
「ロアも、ありがとう。よし、方針は決めた。このまま敵、左翼の表面を撫でるように突撃。そのまま離脱する」
私は早速思い付いた事を試そうと皆に指示をだす。
ごそごそとリュックをあさり、準備を整える。
直前に迫った敵。ヒポポが進路を変える。私の希望通りに。
その時だった。
敵の歩兵部隊への号令が荒野に響く。
放たれた一斉射。
迫り来る無数の魔法弾。
それは色とりどりの攻撃。属性がつけられた、人を殺すための攻撃。
初手からこちらを殺しにかかってきているのが、これで判明した。
私は準備していたスクロールを展開、発動する。リミットを解除済みのスクロールを。
「《固定》魔法弾《空間座標》即時発動っ!」
展開されたスクロール。そのスクロールから大きく魔法陣が私たちの前方に発現する。
その魔法陣に触れた敵の魔法弾が、その場でまるで凍りついたようにして止まる。
こちらに迫る魔法弾がすべてだ。
敵の左翼に並走するように移動するヒポポ。
手を伸ばせば敵に触れられそうになる、一瞬のタイミング。
そのタイミングで、私は用意したものを敵の歩兵へと投げつけた。
敵の装備品のない露出した部分を狙って。
投げつけたのはポーション。かつてタウラの呪いを解除したポーションと、同じものだ。
そのポーションが敵歩兵へと降り注いだ。




