第一波!!
「ハロルドなのか!」
私は思わず叫ぶ。
その見た目は、記憶にある学生の頃の、はつらつとした印象から一転していた。苦労したのがわかる大人の顔つき。
そして何よりも色濃く見えたのは疲労と、そして、その必死な表情だった。
「その声は、ルストか!」
砂ぼこりにまみれたハロルドの顔。
私は演壇を飛び降りると、ハロルドの乗る騎獣に向かって走りよる。
すぐ後ろからカリーンも近づいて来るのがわかる。
「ハロルド! お前、目が──」
私は近づくにつれ、ハロルドが全身、怪我だらけなのに気がつく。特に両目の怪我は深そうだ。よくこんな状態でここまで騎獣に乗ってこれたと驚いてしまう。
「ルスト。良かった。お前に会えて。もう、やつらはすぐそこまで来ている。王都は完全に落ちた。国中、どこもやつの手が伸びている。もう無事なのはここだけ──。頼む、ルスト。皆、操られているだけなん……」
そこまで話したところで、ぐらりとハロルドの体が傾く。
そのまま重力に引かれるようにして、騎獣の背から落下していくハロルドの体。
そこに、私を追い抜いたカリーンが滑り込む。
がしっとお姫様抱っこのようにして、カリーンが地面すれすれでハロルドの体を受け止める。
「カリーン! 流石! さあ、すぐに治療する。どこか寝かせられる所へ!」
私はカリーンに声をかける。なんだか学生の頃に戻ったような錯覚を一瞬、覚える。
私とカリーンの悪行のとばっちりを受けるハロルドという構図が懐かしかったのかもしれない。よくハロルド一人怪我をしたりしていたので。
思わず現実逃避ぎみにそんな事を考えていた私に、カリーンから指示が飛ぶ。
「駄目だ! ハロルドの言葉だと、敵が迫っている可能性が高い。ルスト、ポーションだけ渡してくれ。ハロルドの面倒はこっちで見る。ルストはアーリとロアを連れて、偵察を! 出来たら戦力評価を頼むぞ、ルスト」
と、カリーンは軽々とハロルドをお姫様抱っこしながら無茶を言う。
「わかりました!」「うん!」近くまで来ていたアーリとロアの返事。
「了解っ。アーリ、ロア。よろしくね。で、どっちから来るか判るか?」
私は二人にたずねる。
一瞬沈黙するアーリ。その瞳に輝く魔素のきらめき。
「あっちです」
「うん。何か見えるよ」とロアも遠視してくれる。
私は二人と視線を交わす。
「よし。いこうか」
私はヒポポを呼び出すと二人をヒポポの背に引っ張り上げるようにして乗せる。
「ヒポポ!」
私の掛け声とともに、ヒポポが大きく跳躍する。
その8本の足で、巧みにレンガ作りの家々の一部に足をかけ、地面にいる群衆から上手く抜け出したヒポポ。
そのままヒポポは私たちを乗せ、屋根や壁の一部に足をかけ移動する。その動きはまるで、鳥のような軽やかさだ。
そうして、ヒポポはアーリの指し示す方向へと向かっていった。




