表彰されたらコメントを求められた!!
私は肩にセイルークをとまらせたまま、カリーンの前へと進む。
セイルークのやらかした奇跡もあってか、皆からおくられる拍手が他の表彰者より大きいようだ。
カリーンの前で足を止め、他の表彰者と同じように片膝をつく。
背の低いカリーンに配慮してのアーリからの指示だ。
「ルスト師。そなたの貢献に対し、ここにハーバフルトン勲章を授ける」とカリーン。
私の左胸にカリーンが勲章をとめる。アドミラル家の家紋である、双頭の牛があしらわれている。
「ではここで、ルスト師よりコメントをお願いいたします」と司会のアーリ。
私は立ち上がると、こちらを見つめる群衆へと向き直る。
──なるほど。話す機会があるから錬金術研究部門の名称を考えておいて、発表しろって言ってたけど……。今かー。このタイミングかー。領主たるカリーンの演説があって、セイルークがやらかしての、今かー。
ちらりとカリーンを見る。ニヤッと笑い返される。
──こいつ、絶対面白がっているよな。
私とカリーンの視線のやり取りを察したのか、アーリが心配そうにこちらを見ている。
──あれ? ……アーリの未来視が発動した──訳ではないか。はぁ、仕方ない。あまりアーリをやきもきさせるのも、可哀想だしな。もともと上手い演説なんて出来ないのは自分でわかっているんでね。適当に話しますか。
私は改めてこちらを見つめている人々をゆっくりと見ていく。幾人もいる顔見知り。彼らに個別に話しかけるつもりで口を開く。
「皆様、先ほどのカゲロの苗の成長には驚かれたでしょう」
いったん、そこでためる。
「セイルークが先ほど行ったこと。あれは原初魔術の一種です。あれで、ここハーバフルトンは、祝福されました。祝福の内容については、原初魔術の専門家による調査が行われる予定です。ちなみに、そちらのハルハマー師です。彼は、私の恩師であり原初魔術の専門家になります。そして、錬金術研究部門の顧問として勤務予定です」
私はカリーンから丸投げされた分をハルハマーに丸投げしておく。
「さて、私の統括する錬金術研究部門の名称なのですが、散々周りから名称を決めろとせっつかれてきました。ようやく決めました。名を、カゲロ機関とします。この頂いたハーバフルトン勲章に恥じない働きを、これからもカゲロ機関と共に、はたしていく所存です。皆様、よろしくお願いいたします」
私が、ちょうど話し終わったタイミングでそれが訪れた。
軍部の制服をまとった男性が騎獣に乗ったまま、広場へと乗り込んできた。
群衆が逃げるように道を開け、その隙間を強引に進む騎獣。
男が、叫ぶ。
「カリーン! ルスト! クーデターだ。王城が、落ちたっ!」
それは久しぶりに見る私とカリーンの学生時代の友人、ハロルドだった。




