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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第二章

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命名式の開始!!

 アーリが近づいてくると、手早くこの後の式の流れを伝えてくる。


 私は研究部門の名前を考えながら、聞いていく。


 なぜか不安そうにこちらを見てくるアーリ。しかし忙しそうに、そのまま別の人のところへと説明に向かってしまう。


 そのまま、命名式の開始の時間となったようだ。

 壇上へと上がるアーリ。


「皆様、大変お待たせ致しました。ただいまより、アドミラル領はじまりの街となる、この地への命名式を行います。まずは遠方よりご来訪頂きました方の登壇となります。拍手でお迎え下さい」


 アーリが司会を行うようだ。


「神官騎士タウラ様。女神アレイスラ様の騎士にして三剣のうちの一つを下賜されております」


 観衆から盛大な拍手の中、タウラが壇上の端まで歩く。


「錬金術師ハルハマー師。元錬金術協会協会長。マスターランクにして、数多の功績が叙勲されております」


 群衆から起こるどよめき。何度か野営地に来ているタウラよりも物珍しいのだろう。

 ノリノリで手を振りながらハルハマーはタウラの横まで歩いていく。


 その後も隣の領地の高官など、数名の来賓が紹介され登壇していく。


「次に各部署の責任者の方となります」アーリの司会のタイミングでリットナー達が登壇していく。


 私は何故か最後だ。野営地に来た順かもしれない。


「錬金術研究部門部門長ルスト師」


 ついに私の名前が呼ばれる。目の前の段差に足をかけ、壇上へと上がる。


 一気に開ける視界。


 広場は人混みで埋め尽くされていた。


 その時だった。

 他の誰の時よりも大きな拍手の音が沸き上がる。その合間から、声も聞こえてくる。

 どうやら、私の名前を呼んでくれているようだ。


 それは、これまでこの野営地で関わった人たちからの親しみと感謝の込められた声援だった。


 思わず、胸が熱くなる。


 確かにこの地に来てから色々な人たちを助けてきた。風土病の治療から始まり、日々の細々とした怪我の治療。水問題の解決。アーマーサーモンの撃退。


 ただそれらは、私としては業務のうち、当たり前の事をしてきただけなのだ。それでも、こういう場で改めて感謝の気持ちとして伝えられると、この地にきて本当に良かったと思わずにはいられない。


 ──錬金術協会にいた頃にここまで皆から感謝された事なんてあったかな。……辞めて良かった。


 私は手を振り返しながら壇上をアーリから指示された場所まで進む。

 しかし、胸がいっぱい過ぎて、思わず場所を間違えてしまう。

 リットナー達の、そこそこっ! という無言の指示。


 片手で感謝を返して、私は教えて貰った場所に移動する。


 そうして広い壇上に、二列で半円を描くようにして並んだ私達。


 再びアーリの司会の声。


「最後に、我らが領主、カリーン=アドミラル様。静粛にお願いします」


 それまでの熱狂ぶりとはうってかわり、しんっと静まり返る群衆。

 せきの音一つしない。


 その静寂の中、高らかに靴音を響かせ、カリーンが壇上へと現れた。




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