身だしなみを整えよう!!
私は礼服に着替えるために、自分の天幕で準備をしていた。
無事にカリーンに隕鉄を渡し、新しい領都の候補地の下見の件も伝え済みだ。
その際に無事にハルハマーの事も紹介出来た。
ハルハマーは、新領都の最有力候補地の言わば隣に拠点を構えている事になる。
どうも帰り道で話を聞いたところ、ハルハマーは古巣を追い出された後、タイミング的にはカリーンが領地としてこのアドミラル領を拝領する前に、ひっそりとあの地下に隠れ住み始めていたようだ。
モンスターはびこる中、一人でスローライフを楽しみながら研究をしていたらしい。人間関係に悩むよりよっぽど気楽だと大笑いしながら言っていた。
もとから破天荒な人物だとは思っていたが、最初その話を聞いた時は、私でも唖然としてしまった。
なぜかその場に居たロアとタウラは、錬金術師ならそんな無茶も普通だろうに、という視線をハルハマーと唖然としている私の両方に送ってきていた。
私は、ハルハマーほど突拍子もない事をしているつもりは全くないのだが。
そのハルハマーは今頃カリーンと、今後のことについて、じっくりお話し合いの最中だろう。先住権を認めて貰う代わりに、知識と技術を提供すると息巻いていた。
そんなことを思い出しながら、取り出した礼服。適当にたたんでいたせいで、ちょっとしわしわだ。
「はあ、街の命名式が重要なのはわかるけど、研究していたかったな。セイルークのステータスも解析は途中だし、《結合》のスクロールの安定性の改良に、多層式魔法陣を応用できないか試したかった──」
私はローズの張り出してくれた蔦にその服を広げてかける。
──着るのもめんどくさいんだよな。まずは、シワとりでもするか。
マスターランクの錬金術師として恥ずかしくない格好をしてこいとカリーンに釘を刺されたから仕方ない。私はスクロールを取り出し、展開する。
──帰りの暇な時にスクロールの解放した制限を戻しておいて、本当に良かったよ。
礼服の裾を引っ張って、シワを伸ばした状態で発動。
「《固着》」
手を離しても、礼服の伸ばした部分はそのままで固定されている。
同じようにして、私はぐるっと全体的に礼服のシワをとる。
「まあ、こんなものかな」
久しぶりの礼服に少し手間取りながら着込んでいく。
ローズが適切にその蔦先でフォローしてくれて、何とか無事に全て着込んだときだった。天幕の外から声がする。
「ルスト師? 大丈夫ですか? もうお時間ですよ」とアーリが呼びに来てくれたようだ。
「あと少しです!」
私は急いでこれまで貰った勲章を礼服に留めていく。最後にメダリオンを首にかけると、急いで天幕を出た。




