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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第二章

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新人さんにわかってもらおう!!

「ここか。かなり人が多いな。何の行列だろう」


 私達はカリーンの新しい仕事場らしき建物の前へと来ていた。

 レンガ作りのお屋敷だ。たぶん、庁舎のような役割もあるのだろう。


 私は、建物の正面口へと列を作っている人々の方へいくと、最後尾の人間に声をかける。


「すいません、これってなんの行列ですか?」


「うん? 当然領主様にお目にかかって、陳情する列ですよ。あなたもカリーン様に会いにいらしたのでしょう?」


「え、ああ。はい。教えてくれてありがとうございます」


 私は皆のもとへと戻ると、その事を伝える。

 ロアが不思議そうな顔をする。


「無視して入ってしまえばいい」


 そう言うと、並ぶ人々の横を歩いて屋敷の入り口へと向かうロア。

 それもそうかと、ロアに続いて歩き出す。


 ロアが屋敷の入り口を進もうとした時だった。

 屋敷の入り口にいた女性スタッフらしき人に呼び止められる。新規のスタッフなのだろう、見たことのない顔だ。


「入館証のご提示をお願いします」


「持ってない」とロアがそっけなく答える。


「それではあちらの陳情待ちの列にお並び下さい」


「面倒。通して」


「えっ、困ります。規則ですから。入館証がない方は並んで頂かないと」


 ロアと女性スタッフの言い争いが始まってしまう。


「ロア、仕方ないよ。規則だって言うから──」


 私がロアにそう声をかけた時だった。私達を呼ぶ声がその場に響く。


「ルスト師! それにロアも! 無事で戻ってたのかっ。二人ともお帰り」


 それは食料保管庫の責任者のリットナーだった。

 ちょうど屋敷から出て、こちらへと向かってくるリットナー。返事をしようとする私達を遮って、ロアと言い争っていた女性スタッフがリットナーに話し始める。


「リットナー様! 良かった。困っていたんです。この人たち、入館証もないのに列に並んでくれなくて──」


「バッ、おまえ! 何を言っているんだ! この人達を誰だか知らないのかっ! え、並ばせようとしていたのかっ!」


 リットナーが焦った様子で、私達と女性スタッフを交互に見ながら早口で話す。


「えっ……。はぃ」


 リットナーのただならない様子に自信なさげに答えるスタッフ。


「うわ、マジか……。おいおい。こちらはマスターランクの錬金術師でアドミラル領の錬金術研究部門のトップだぞ。しかも俺の弟の恩人だ」


 それを聞いて、口もとを手で押さえて、サーッと青ざめる女性スタッフ。よく見たらロアよりも、若そうだ。


「あー。ルストです。よろしく?」


 なんとなく自己紹介をしておく。


「で、こっちは、()()アーリの妹だ。当然、魔眼持ちだし、カリーン様の直接の配下だぞ」


 リットナーが次にロアを指差して伝える。


「ロア・サード」私の真似をして名乗るロア。悪のりしている感じが少しする。


 青ざめていた女性スタッフが、次はしばらく口をぱくぱくとさせている。なかなか言葉が出てこないようだ。それでもようやく、小さな声で私とロアに向かって返事をする。


「チェリ・カーです。この度は大変失礼致しました……」


「チェリさん、知らなかったなら仕方ないですよ。さて、これで中に入れそうですね。リットナーさん、カリーンに報告とお土産があるんだけど、案内、お願い出来ます?」


「ええ! ええ! もちろんっ。こっちだ!」


 そう言って案内してもらい、私達はようやくカリーンの執務室へと到着した。






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