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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第二章

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side リハルザム 14

「リハルザム様、こちらが本日の獲物です」


 そう言って、ぐにぐにとうごめく粘体にネズミを差し出したのは、かつて冒険者だったデデン。その頭からは立派なキノコが生えていた。


 辺りにはデデン以外にも頭からキノコを生やした人間が、何人もいる。


 あるものは粗末ながら武器を手にしていた。彼らは、元底辺冒険者だった者達。

 また別のグループは服装さえボロボロで、着の身着のままといった様子の者達。


 どの人間も僅かばかりの自我は残っているようだ。しかし、その行動はリハルザムが頭に植え付けたキノコに、完全に支配されていた。

 そういった、言わばキノコ人たちだが、どうも元冒険者の方が立場が上、という事はなさそうだ。


 クチャクチャとネズミを消化しているリハルザムの横で、右腕として他のキノコ人達に指示を出しているのは、髭モジャの巨漢だった。その服装は非常に粗末で、長年の路上生活による不摂生の痕跡が、その体のそこかしこに見える。

 しかしその割りには、妙な風格と迫力のある男だった。


 当然その頭からはキノコを生やしているのだが、それだけでは無い。その髭の隙間からも無数のキノコが見える。


「ドーガ様。リハルザム師に客人と言う人が──」


 ドーガと呼ばれた巨漢の髭モジャがゆっくりと振り向く。報告に現れたのはデデンの仲間の元底辺冒険者だった。その顔を、思いっきり平手打ちするドーガ。


 物凄い威力だ。

 平手打ちされた方は、宙を舞い、壁に激突する。どうやら頭から生えたキノコは、人間の脳のリミッターを外す効果もあるようだ。


 ドーガが吐き捨てるように壁に向かって唸るように言う。


「ばか野郎が。リハルザム師に客など来るものか。それは敵だ。捕まえろとは言わん。せめて殺してから連れてこい!」


 そこに目深にフードをかぶった一人の男が現れる。

 とっさにリハルザムを守ろうと動くドーガとキノコ人達。しかし、ドーガもキノコ人達もまるで床に張り付いたかのようにその体を動かすことが出来なくなる。


「おやおや、本当に客なんですがね。リハルザム師、お久しぶりですな。リハルザム師が魔族へと転生進化して以来ですかな。全く全く。素晴らしいですな。立派な巣だ。ワーカーたる存在も充実しているようですし。順調に魔王への道を歩んでいるようですな」


 フードを目深にかぶった呪術師が、リハルザムの巣を見回しながら感想を述べる。それはまるでペットや実験動物の成長を喜ぶような口調だった。


「お、前はっ! よく、も俺を! こんな、体に、しやがったなっ」


 リハルザムが粘体部分から人型を作ると、呪術師に向かって怒りをぶつける。


 しかし、リハルザムも他のキノコ人と同じように、その場から動けない様子だ。


「な、んだ、これは。体が、進まない!」


「まあまあ。そんなに頑張っても無駄ですよ。リハルザム師を転生進化させるときにつけさせて頂いた呪い、みたいな物です。そんな事よりも今日は一つお知らせがあって来たんですよ。リハルザム師がご執心のルスト師の事なんですがね」


 ともったいぶって、そこで言葉を切る呪術師。


「ルス、トだとっ! 奴が、どう、したのだ!?」


「本当にもう、色々邪魔だったんでね。なので、殺しときましたよ。いやはや秘蔵の隕石落としの魔道具を使ったんで、こんがりかつ、体はすっかりバラバラになってることでしょう」


「う、そだ。うそ、だ。うそだ。ルストがお前などに、殺されるはずがない。俺が、俺が奴を殺さねばならない、のだ」


 リハルザムの粘体部分から生えた人型が頭を抱えるようにして、うずくまる。


「いやいや。死んでますよ死んでます。星落としはね、創世の時代の、原初魔術の貴重な魔道具なんですよ。いやはや、あれは本当に貴重な品でした。出来たらね、ルスト師の怒りもかきたてようとしたんですよ。で、その心の隙を狙ってたんです。その方が安上がりだから。でも、残念な事に冷静でね。全くつまらない男でした。そういう意味では、私は貴方の方が好きですよ。こうやって簡単に感情に飲まれてくれるのは本当に楽で良い」


 そう言うと、リハルザムを見下ろし、高笑いをして去っていく呪術師。


「さてさて、これでリハルザム師がどう変化するのか。楽しみで楽しみで、仕方ないですね」


 そんな呪術師の最後の声など聞こえていない様子で、リハルザムはひたすらうずくまる。


「うそだうそだ」と叫び続けていた。


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