収穫物を手にしよう!!
私は急いでポーションを取り出すと、頭からかぶる。
ぷすぷすと煙の上がっていた皮膚。真っ赤になっていたそれがポーションが触れたはしから修復されていく。
私は追加でポーションを両手に持つと、人よりも強靭な皮膚を持つヒポポとセイルークにもかけておく。
羨ましい事に、両者ともほとんどダメージは無かったようだ。
とりあえず、ほっと息をつくと、私は複合展開し、結合したままの固着のスクロール達をそのまま維持しておく。
隕石は大気との摩擦熱で超高温に加熱されている。安全のためにも、しばらくは放射熱ごと固着しておくに限る。
「出来たらカリーンにお土産に持って帰ってあげたいしな。隕鉄の比率にもよるけど、カリーン用の新しい武具の材料になりそうだ」
私は固着のスクロール製の手に包まれたままの隕石を見つめてそんな事を呟く。
「ぶもぶも」
私が隕石を見ていると、ヒポポから呼ぶ声がする。
「何か見つけた?」
私はヒポポへと近づいていく。ヒポポがいるのはちょうどさっきまで呪術師がいた場所。
ヒポポが鼻先で示した先には小さな虫の死骸の様な物がたくさん散らばっていた。
私は慎重にしゃがみこみ、触れないように気を付けながらそれを観察していく。そのまま《転写》のスクロールでも情報が出ないか見ていく。
「ふむ、なるほどな。これは興味深い」
どうやら先程の呪術師に見えたものは、この小さな虫の集合体が擬態していた物のようだ。
「この虫自体が使い魔っぽいな。もしかしたら呪術師がタウラから逃げ続けられたタネはこれかな?」
私がさらに地面を見ていくと、半分に割れたようにみえる指輪らしき物が見つかる。
指輪にはもとは一つだったように見える魔晶石がついていた。しかも、ただの魔晶石では無い。
透明な魔晶石の内部に、立体的に魔法陣らしき物があるのが見えるのだ。
「これは──凄い! どうやって魔晶石の中に魔法陣が書き込まれているんだ? しかも全く未知の魔法陣だ」
私が興奮のあまり思わずその割れた指輪を触ってしまう。
残念な事に、私の手の中でさらさらと崩れていく指輪。どうやら使用後は崩れるような仕様だったようだ。
「ああっ! ──残念」
思わず漏れるそんな呟き。きっとあの指輪が隕石を喚んだ魔道具か何かだったのだろう。
現在の平面が主体の魔法陣とは比べ物にならない複雑さを実現していた立体型の魔法陣。
その詳細は私の手の中で残念ながら消えてしまった。
ただ、そのコンセプトは素晴らしい物がある。私はアイデアが次々と沸いてくるのを忘れないようにメモしつつ、気を取り直して隕石を固着したまま回収する。
「さて、早くタウラ達と合流しないと。きっと心配しているはずだ。それにハルハマー師の件もあるしな」
私はヒポポにまたがりながらそう話しかける。
「ぶも」
そうだねとお返事をするヒポポの肩を叩き、ヒポポの足跡を頼りに来た道を、私達は引き返し始めた。
失いかけたセイルークを無事に取り戻し。新たな収穫を手にして。




