遭遇!!
「やられちゃいましたか。やれやれ。これで三匹目ですよ。三匹目。全く、全く。使い魔だってね、大変なんですよ。錬金術師はひょいひょい錬成すればいいんでしょうがね。こっちはいちいち適性のある子を探さないといけないんですから」
周囲をぐるりと見回す私。人どころか、モンスターの姿すら見えていないにもかかわらず、声が聞こえている。
私は警戒を最大まで上げる。
「っ! どこだ、ヒポポ?」
「ぶ、ぶも……」ヒポポにも、知覚できていない様子。
「キュゥ」ポーションを飲み干したセイルークがヒポポの背中に飛び乗ると、びたっと張り付く。
「はぁ。本当はこれで無事に全てが終わるはずだったんですけどね。ルスト師、あなたは本当に一体何者なんです? 困るんですよね。部外者が色々とかき回してくれると」
私は自分の名前を呼ばれ、勢い良く背後へ振り向く。
そこには先程までは誰も居なかったのは確実だ。にも関わらず、今は一人の男が立っていた。フードを目深にかぶり顔の見えない男が。
辺りは平坦な荒れ地。ヒポポの足跡の陥没以外に目立つような物も無い。人一人が隠れられるような大きさの岩すら存在していない。
私は最大限の警戒をしたまま、その男に問いかける。返答次第ではすぐさま攻撃に移れるようにスクロールを準備しながら。
「私はただの錬金術師ですよ。それで、そっちは呪術師、ですね?」
「呪術師! そんな風に呼ぶ人もいますな。やれやれ。まるで昔ながらのまじない師みたいな胡散臭い呼び方で、全く腹立たしい限りだ。全く腹立たしい。だいたい錬金術の方が、亜流で傍流、イレギュラーだというのに。まあ、今はそれは良いでしょう。本題はあなたですよ、あなた。あなたの存在が、どれだけ迷惑だったか。魔族殺しをじわじわと苦しめようと思って創った特別製の使い魔はあっさり壊すし。あの、めんどくさいストーカー女にかけた呪いも消すわ。ついにはそのドラゴンですよ! ドラゴン! 本当ならここですっかり処理が済んだ所なのに」
ペラペラとしゃべり続ける男。
──こいつは何を言っている? 錬金術がイレギュラー? あと、ナマズもやはりこいつの使い魔だったか。そしてセイルークだ。処理ってどういう事だ? 何か特別な事をするのか?
私はスクロールをギュっと握りしめた手から一度力を抜く。疑問と共に沸き上がってきた怒りのまま攻撃しようとするのをいったん理性で押さえ込む。
怒りに任せて攻撃しても、精度が落ちるのだ。それに嘘か本当かわからないが、話させて少しでも情報を得ておくべきと思って。
しかし、訳のわからない内容が多い。嘘か本当かの判断すらも難しい。
「怒りを抑えますか。まあ、良いでしょう。ルスト師、あなたは単純に殺しておくべきって事でしょうね。どす黒い感情に溺れた、有望なリハルザム師と違ってね」
ぴたりと口をつぐむ男。
──くるっ!
私は構えていたスクロールを展開した。




