追跡しよう!!
大地を抉る、ヒポポの踏み込み。
その一踏み、一踏みが、ヒポポとヒポポに乗る私の体を、前へ、前へと押し出す。
ヒポポの通った後には大量の砂塵が舞い、大地にはクレーターと見間違うばかりの足跡が続いていた。
セイルークが羽蛇に連れ去られてからはや二日。
私はハルハマーとタウラ、ロアと手早く打ち合わせをすると、見失わないうちにとヒポポと二人だけで全力で羽蛇を追っていた。
皆を置いてきたのは苦渋の選択だったが、速度を優先した結果だ。遠視の使えるロア。使い魔と呪術師について知識を持つタウラ。錬金術師として最高峰の一人であるハルハマー。打ち合わせた時に、皆がこぞって自分こそついていくべき、と言ってくれた。
しかし、これが、最速なのだ。
準備を整えたらハルハマーが自身の錬成獣で、タウラとロアを連れて追ってきてくれることになっている。
運良く今時期の辺境は、ほとんど雨が降らない。全力を出したヒポポの踏み込み跡は、そう簡単に消える事は無いのだ。追跡は容易いだろう。必ず追い付いてくれると、私は信じている。
だから、私の役割はそれまで羽蛇を見失わない事だ。運良く、羽蛇は東へと飛んでいる。これが反対方向だと、海で追跡は困難だった。
全速力の激しく揺れるヒポポに片手でしがみつきながら、私は背中のリュックに手を伸ばし携行食を取り出す。いつもの草レンガだ。
そのままかみ砕く。立ち上る草の香りもほどほどに、飲み物がわりのスタミナポーションで飲み込む。
この二日間、走り続けているヒポポにも、定期的にスタミナポーションを振りかけてあげていた。
「ヒポポっ」
私は一声かけ、ヒポポの口許に手を伸ばす。砕いた魔石を握って。
顔をこちらへと向け、口を開くヒポポ。
開いた口へと砕いた魔石を放り込む。
バリバリと豪快な音。
こうして止まること無く私たちは走り続けていた。
相変わらず上空を飛び続ける羽蛇。その体の下に、ぐったりとしたままのセイルークの姿も時たま見える。
私の推測が正しければ、セイルークの命は無事のはずだ。
多分だが、例の触手の生えたナマズも呪術師の使い魔の可能性が高いとみている。切断時に飛び散った紫色の液体といい、セイルークにだけ即効性の高い毒といい、類似点が多いのだ。
だとすると、理由はわからないが呪術師はセイルークを生きたまま捕まえようとしている感じがする。
しかし、無事だと推測していても、実際捕まったままの姿は、胸の痛くなる光景だった。
そんな事を思いつつ私が見つめる先で、ついに羽蛇が高度を下げ始めた。




