空とぶ敵の正体!!
セイルークに襲いかかっている生き物だが、蛇に何枚もの翼が生えたような姿をしているように見える。
その羽のある蛇のサイズはセイルークの数倍はある。
「あの羽蛇! 呪術師の使い魔だっ」
私たちを追って地上に上がってきたタウラが、上空を見るなり、叫ぶ。
「え、使い魔?! 前にヒポポが倒した?」
「ああ、それの同類のはずだ。もっとたちが悪いらしいが……」
その羽蛇に向かって、セイルークがくわっとあぎとを広げる。その奥で、魔素が急速に高まるにつれ、光が収束していく。
放たれる光。前に、空とぶキノコを焼き払ったその光。
しかし、羽蛇はセイルークの予備動作の段階でその複数の羽を巧みに動かし、まるで空を這うようにして動いていた。するすると光の軌道を外れる羽蛇。
そこへ放たれたセイルークの光はするりとかわされてしまう。
「え、かわした」とロアの驚きの声。
「ルストっ! 急ぐのだ」とハルハマー師の声。
「はい! 《展開》」
私は急いで数本のスクロールを展開させると、上空へと向かって飛ばす。
くるくると広がりながら上昇を始めるスクロール達。しかし、その速度は悲しいことに遅すぎた。
羽蛇の体から、触手のような物がいくつもいくつも、一斉に飛び出してくる。それは、前にどこかで見たことのあるような見た目をしている。
「《研磨》」
私はセイルークへと迫る触手へ向けて上昇途中のスクロールから、金剛石の粉入り竜巻を放つ。
射程ギリギリ。
それでも何本かの触手は切り裂くことに成功する。
飛び散る、紫色の液体。バラバラになった破片が落ちてくる。
その触手の体液の色に、私は嫌な予感が高まる。
そうしているうちに、スクロールで防ぎきれなかった何本もの触手が、そのままセイルークへと絡み付いてしまう。
「ピギャッ!」
触手に絡まれ、急にぐったりとした様子を見せるセイルーク。
遠目でもわかる。
セイルークのつぶらな瞳が、助けて、とこちらを見ているのが。
それは私とセイルークとのはじめて出会った時の事を、嫌でも思い起こさせるような姿だった。
「《研磨》《研磨》《研磨》!」
羽蛇へと迫る竜巻。
しかし、羽蛇は触手を巻き取るようにしてセイルークを確保する。そのまま、ドラゴンブレスをかわしたのと同じ巧みな身のこなしで、私の放った竜巻達も、全てかわされてしまう。
そのままセイルークを触手で束縛し、羽蛇は飛び去って行ってしまった。
東へと向かって。




