駆けつけよう!!
扉の前で立ち止まったハルハマーに私が追い付いた時だった。
聞き慣れた甲高い鳴き声が、どこからか漏れ聞こえてくる。
「これは?! セイルークの鳴き声かっ?」
「ふむ。ここだとちょうど空気穴から外の物音が聞こえるようになっておる。あの声は、ルストの錬成獣か?」
「いえ、私が契約したドラゴンです。ちょっと気になるので、私は戻ります!」
私は入り口に向かって、今来たばかりの道を逆向きに走り出す。
「なにっー! ドラゴンだと! ルスト、原初魔術を使ったのかっ」
今度はハルハマーが私の事を追いかけてくる。ひどく興奮している様子。
──そういえば、ハルハマー師のライフワークの研究って、原初魔術から錬金術への変遷だったな。
「原初魔術を使ったのはセイルークの方ですけど、ね」
私は走りながら話していたせいで息が切れてくる。こっそり取り出したスタミナポーションを素早く飲んでいると、地上へのはしごが見えてくる。
「セイルークか! それは是非とも研究してみたいものだな」
「解剖は禁止ですよっ」
私ははしごを登りながら、下を向きハルハマーに注意しておく。
ちょうどハルハマー越しに、タウラとロアも追いかけて来ていたのが見てる。
「なーに。そんな無粋なことはせんよ! で、何処までならいいんじゃ?」
と、逆に聞き返してくるハルハマー。
一瞬返答に詰まった私は、無難に答えておく。
「セイルークが自分で許可した所まで、です!」
「は、はー。さすがドラゴン! 錬金術師の行う検査の是非まで判断出来るのかっ! そこまで知能が高いというのか! これはいよいよ楽しみじゃな!」
ハイテンションのハルハマー。
同じ深淵に眠る真理を求める者としてはその興奮具合が、実はわからなくも無い。
私も自分の研究を大きく進める可能のある存在を目の前にしたら、似たようなものだろう。
──いや、ダメだ。似たようなものだとしたら逆に安心出来ない。やっぱりセイルークは私がしっかり守ってやらないと。だいたい人の事を研究バカとか言っておいて、自分だって……。
私は決意も新たにはしごを登りきる。
地上に降り注ぐ日の光が眩しい。
「セイルークっ!」
私の叫びに応えるように、上空から甲高い鳴き声が響く。
上を見ると、そこではセイルークと、羽の生えた何かが、激しく空中で争っていた。




