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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第一章

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寂れた理由を探ってみよう!!

 トマ村に入ってすぐ、壮年の男性に声をかけられる。


「何者だ、あんた?」

「こんにちは、旅の錬金術師をしていますルストと言います。お伺いしたいことが……」


 私は寂れた様子の理由を聞こうとする。

 そこへかぶせぎみにその男性が話してくる。


「なにっ! 錬金術師だって! ふーむ。あんたちょっと村長のとこに来てくんねえか?」

「いいですよ」


 私は快諾する。詳しい事情を聞くのにも都合が良さそうだったので。


 そのまま男性に連れられ村のなかを進む。

 やはり寂れているという外から眺めた印象は間違いなかったようで。空き家が目立つ。


 ──これは、特定の年齢性別の人が減った、と言うよりは家族単位で人が減っている感じかな。転出が増えている?


 村の様子を見ながらそんな事を考えていると、村長宅に到着する。

 あまり他の家屋と変わらない大きさの家だ。家の玄関の上に長である事を示す、カゲロの枝が吊るされていなかったら村長宅と見分けがつかなかっただろう。


 ──おっ、立派なカゲロだ。大きいし、まだみずみずしい。良い錬成の素材になるな。近くにカゲロの木が生えているのかな。


 私がそんな事を考えていると壮年の男性がドアを開けながら中に向かって叫ぶ。


「村長っ! 錬金術師をつれてきたぞ!」

「何、本物か?」

「……いや、確認はしていないが、でもよ、見た目は錬金術師だぜ」


 なにやら私のことで話し合っている様子に、私は懐からメダリオンを出しながら家の中へと入っていく。


「こんにちはー。旅の錬金術師でルストと言います。これ、錬金術師の証のメダリオンです」


 私は村長らしき老人に示す。


「──っ! こ、これは失礼しました。わしがこのトマ村の村長です。そのメダリオン、確かに錬金術師様とお見受けしました。しかも、最高ランクの物ではありませんか?」


 私は自身のメダリオンを改めて見る。基本的に錬金術協会所属の錬金術師は、皆このマスターランクのメダリオンを持っているからあまり意識したことはなかったが、確かにランクとしては一番上だ。一応、あんなところだが、協会は国の錬金術のトップ組織なので。


「確かにランクは一番上ですよ」


 私は特に隠すつもりもないので、肯定する。


「これは、村の者が本当に失礼をしたようで申し訳ない。ルスト師、実はお頼みしたいことがありまして。とりあえずお茶でもいかがですか?」


 村長は居間の方を示す。


「ごちそうになります」


 私は誘いにのる。十中八九、この村が寂れている理由に関係のある依頼だろうと思ったので。それにマスターランクの者への呼び方を知っているのは、それなりの教養がある証だ。話すのもスムーズだろう。


 案内された居間で席につき、しばし村長の奥さんらしき老婆の出してくれたお茶を堪能する。ごくごく普通の茶葉だ。しかし、携行食ばかりの食事のあとでは温かいというだけで美味しい。

 互いにお茶を飲み終えた所で、村長がおもむろに話し出す。


「さて、早速なのですが、ルスト師は旧型の魔晶石の在庫はお持ちでは無いでしょうか?」


 村長の切り出してきたのは、意外なお願いだった。



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