ここだ!!
「間違いない、これだ。ここで複数の魔素のラインが合流している」
私は激しく動くペンデュラムを一度止め、しまいこみながら二人に伝える。
周囲の警戒を続けるロアと、私が指し示した地点にあるものを興味深そうに見ているタウラ。
今私たちがいるのは遺跡から離れてしばらく歩いた場所だ。地面はすっかり元の荒れ地だが、所々に建材だったように見える石が転がっている。
もしかしたら、昔はここにも遺跡と同じような建物群があったのかもしれない。
「どう見ても、扉だな。開けるのか、ルスト」
タウラが私の指差した先を見ながらそう、呟く。そこには普通サイズの金属製の扉が地面にあった。
「ここまで来て、そのまま帰るわけにも行かないからね。細心の注意を払いつつ、モンスターが居ない原因の目処がつくまでは」
私はそう言いながら、地面にある扉に近づく。
地面から生えるようにして飛び出しているドアノブを握ると、回す。
ガチャ。
鍵は掛かっていないようだ。
そのまま扉を手前側、持ち上げるようにして開く。なかなか重たい。
扉の開いた先に現れたのは、四角い穴だった。
そこに、降りるようのはしごが一つ。
少し先には床も見える。そこまで深い穴ではなさそうだ。
「じゃあ、ここは私が──」
「先に行く」とロアが私の言葉を遮るようにして言うと、槍を片手に器用に梯子を降りていく。
「では私も」と続いてタウラも降りてしまう。
私はなんとなく釈然としないものを感じながら二人に続いて地下へと降りていった。
「照明が普通につく。最近人が通った形跡もある。誰かいるのは間違いない」と降り立った私に伝えてくるロア。
ロアの言うとおり、地下の通路はうっすらと光が灯り、奥へと続いていた。通路は三人並んでも通れるぐらいの幅がある。
「周辺に、罠は無い」とロアは目を凝らしている。
どうやら透視してくれているようだ。
「うーむ」
考え込む様子のタウラ。
「タウラ、どうした?」
「いやなに。どうも呪術師の隠れ家、といった感じがあまりしないのでな」
「言われてみれば確かに」
「そんなに簡単には見つからない、か」
「誰かくる! 通路の先」
のんびりタウラと話しているところへ、ロアの警戒を促す声。
私は咄嗟にスクロールを構え、タウラも剣を抜き、構える。
「動くな! 動くと丸焼きにするぞ」と通路の先の角から年配の男性の声。
その声は、私には非常に馴染みのあるものだった。
「もしかして、ハルハマー師っ!?」
私は驚きの声をあげてしまう。
「なんと、ルストかっ」
そう言いながら角を曲がって現れたのは、錬金術協会の前協会長で、私の恩師のハルハマーだった。




