働こう!!
私は片手にペンデュラムを構えて、《転写》のスクロールを展開する。モンスターがこの遺跡に見当たらない理由を調べているところだ。
最初に調べた、目ぼしい建物はどこもこれといって変な所は無かった。どれもただの廃墟だ。タウラはそこで飽きたのか、一旦別れ一人で周囲を見回ってくると歩いていってしまった。
次に、私はゆっくりと歩きながら遺跡全体の地面を調べていた。ロアはちょっと暇そうに私のあとをついてきている。
「おっ! 反応しているな。ここ、魔素の濃さが僅かに高い?」
歩き始めてしばらくした時だった。思わずそんな独り言を呟いてしまう。歩きながらペンデュラムをかざしていたら、ある地点でペンデュラムが反応したのだ。
私は、ペンデュラムの先端の宝石の動きに気をつけながら、しゃがみこむ。
地面に近づくにつれて激しく振動するペンデュラム。
私は地面を良く良く調べるが、他の部分と変わらない石畳だ。《転写》のスクロールで調べてもおかしな部分は無い。
私は四つん這いになるようにして、ペンデュラムをその部分から四方へ動かす。
「何かあった?」
「ああ、この下! ここに魔素のラインがある。こっちからあっちに向かって、線状に魔素が他よりも濃い部分が地面の下にあるみたいなんだ」
私はロアに向かって地面を指差し、その手を動かしながら伝える。
「それって珍しいの?」
「いや、実は良くある。特に魔法陣だな。あれは魔素のラインで出来ているんだ。魔素って、空気中にも漂っているだろ。魔法陣は、その特に濃くなった部分って言ってもいい。例えるなら、砂場で砂を集めて絵を描く感じ、かな」と私は展開中の転写のスクロールを指差しながら告げる。
「ふーん。で、魔法陣がそこの下にあるってこと?」と説明部分には興味が無さそうなロア。
「たぶん、そうかも。しかも、これが魔法陣だとすると、かなり大きい」
「魔法陣ってことは維持してる誰か、いる?」とロアは一気に警戒した様子を見せる。
「うーん。そうとも言えない。設置継続型かも。とりあえずこの魔素のラインに沿って移動してみよう」
ゆっくりとペンデュラムを地面すれすれにかざしながら、私達は移動を開始した。
◆◇
「遺跡の外に続いているのか……」
魔素のラインは私の想像を外れ、魔法陣にはなっていなかったみたいだ。魔法陣のように閉じられた形をしていない。
「タウラに伝えるために戻る?」
「……そうだな。これはちょっと、この先で何が起きているのか私にもわからない。念のため一度、帰ろう」
私は目印だけをその場に残し、タウラと合流するためロアと共に来た道を戻り始めた。




