タウラの話を聞こう!!
食事を終え、私のいれた食後のお茶を飲みながら落ち着いた雰囲気で話し出すタウラ。
「私がルストと別れ王都に向かった後の話からしよう。私は野営地で教えて貰ったように、基板の出所である錬金術協会からの基板の流れを追って調査を始めたのだ。基板は、武具協会経由で軍部に納品されていた。たまたま騎士団の中に女神アレイスラの信徒の知り合いがいてな。その伝で、軍部の中を探って貰ったのだ。すると、どうもそこで基板と魔法銃の横流しがあったようなのだ」
きゅっと手を握りしめるタウラ。ロアはそんなタウラを興味深そうに見ている。
ふーと一息つき、再び話し始めるタウラ。
「当然、横流しが発覚した軍部は大慌てだった。何せ騎士団経由での告発だ。むげには出来ないからな。告発され逮捕された備品管理部門の長の家に、立ち入る許可が出たのだが、私から見ても明らかに呪術師が滞在していた痕跡が色濃く残っていたのだ。どうやらその備品管理部門の長も、その時点で洗脳され操られていた可能性が出てきた」
「呪術にはそのような非合法の術もあるらしいですね」
と、私もタウラの話しに相づちをうつ。
「その後、私は騎士団と連携して呪術師の足取りを追ったのだが、何度も後一歩の所で逃げられてしまっていた。ただ、不思議な事に、呪術師はそんな状況でも王都での潜伏を続けていた様子だったのだ。まるで、まだ王都から離れられない用事があるかのような」
そこでお茶を一口飲むタウラ。
「それは確かに不思議。普通なら王都から離れる」とロア。
「そうしているうちに、王都に羽の生えたアーマーサーモンの襲撃があったのだ」
「ああ、聞いたよ。錬金術協会の建物に被害が出たと」
「そう、不思議と、どのアーマーサーモンも錬金術協会ばかりを狙っている様子だったらしい。私は別の場所にいたので、はぐれのアーマーサーモンと戦っていたぐらいなのだがな。その後も呪術師の目撃情報はあったのだが、ある日を境にピタリとそれも止んでしまったのだ」
「ある日?」とロア。
「そう、魔族が王都に現れた、と噂されている日だ」
そこで顔を見合わせる私とタウラ。
「初耳です」と私。その隣でロアも無言でうんうん頷いている。
「あくまでも噂に過ぎないからな。ただ、新種の魔族だったらしい」とタウラ。
「魔族は今は七体しかいないと言われているよな──」
私がロアとタウラに念のため聞いてみる。
「そう、カリーン様が一体倒し、八体から七体になった」とロア。
「ああ、それで確かカリーンが英雄と呼ばれるようになったのだよな? カリーン、力押しが通じる相手には、滅法強いからな」
と私は頷きながら呟く。
「話を戻させてもらうがよろしいか」とタウラ。私は小刻みに頷く。
「私が聞いたところによると、結局その魔族も駆けつけた軍部の力不足で、取り逃がしてしまったようなのだ。そしてその直後から呪術師の目撃情報がパタリととだえてしまった」
「それは──。明らかに呪術師はその魔族と関係してそうですね」と私もお茶を一口飲む。
「私も同じように思ったのだ。魔族で、王都に一番近くにいると言われているのは、辺境の先、北の海の底に居ると噂されているモノが一体。そしてほぼ同時期に王都に現れた翼の生えたアーマーサーモンも北の辺境の先の海から来たと聞いている」
「もしかして、それだけで?」と私は思わず聞いてしまう。
「そこで他の手がかりがない以上、仕方なかったのだ。そして、北の海の探索に船で来たのだが、途中、不運な事に、船が転覆してしまった。そこから体力のぎりぎりで、あの砂浜へとたどり着いたのだが、半魚人達の縄張りだったようでな。後は知っての通りだ」と話し終えるタウラ。
私は空になったタウラのティーカップにお茶の追加を注ぐ。
「ルスト達はどうしてあの場に?」と逆にタウラの質問が始まる。




