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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第二章

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タウラの治療をしよう!!

 ヒポポの突進で空いたスペースで、私は手早くタウラの治療の準備を進める。


 ──衰弱が酷い。大きな怪我はないな。戦闘前からこの状態だったのか。


「ルスト──」とタウラが何か言いかける。


「先に治療するから。しゃべらないで」と私はタウラに告げる。


 頷くと、ガクッと膝をつくタウラ。私はあわててその体を支えると、ゆっくりと横たえる。意識が飛びかけているようだ。


 私たちの周りではヒポポ達が暴れまわっていた。

 縦横無尽に駆け回り、半魚人の接近を許さないことを最優先に立ち回るヒポポ。そのヒポポに乗ったまま、ロアも槍を振り回し、半魚人の急所を的確に突いていく。


 セイルークも私たちの上、低空を旋回し、ヒポポとロアの取りこぼした半魚人の首筋を、その鋭い牙で切り裂いている。


 ばっとロアが海の方へ振り向いたかと思うと、目をこらしている。


「ルスト師、海。増援くる!」


 叫びながらヒポポから飛び降り、海から私たちを庇うように移動するロア。


「わかった、急ぐ!」


 私は準備した複数のポーションから、【転写】のスクロールで確認したタウラの状態にあわせて、数本を選ぶ。

 ガラス容器の中にそれらを注ぎ、混ぜあわせていく。


 ──魔素の補充を阻害する因子を生まないように。意識レベルの低下がみられるからこちらも追加して──よし、完璧!


 私はタウラの首の下に手を差しのべ、出来た混合ポーションをゆっくりとその口へと注いでいく。気道に入らないように頭の角度に注意しながら。


 ポーションの成分自体は胃まで到達しなくても体内へと吸収されていく。顔面にかけるだけでも効果はあるが、口腔内の血管から吸収した方が効率的なのだ。


 特製ポーションがタウラの体へと吸収されていくにつれて溢れ出す金色の光がタウラの体を包みこむ。

 暖かさの感じられるその光が収まった後には、呼吸も安定し、脈も力強く打ち始めていた。一気に顔色が良くなってくる。そのまま意識を取り戻すタウラ。


 私はほっとしたのもつかの間、直ぐに声を上げる。

 海からは続々とモンスターが現れ始めていた。無数の半魚人。中にはタコのようなモンスターに騎乗している者や、大型の半魚人の姿も散見される。


 ──噂には聞いていたけど、海は本当にモンスターが多いんだな。しかも厄介なことに統制が取れているのか。


「ロア、いったん撤収しよう! 合図に合わせてヒポポに飛び乗って! セイルーク、撤収!」


「わかった!」「キュー!」


「ヒポポ!」私はヒポポを呼びながら、リュックサックから取り出した特製の魔道具を放り投げる。


「ブモっ!」こちらへ駆け寄ってくるヒポポ。


 まだ呆然としているタウラを半ば抱えるようにしてヒポポに乗る。進路を反転させ、ロアを回収に向かうヒポポ。

 私の投げた魔道具が増援で現れたモンスター達の真ん中へと落下してくる。


「目を閉じて!」


 私の叫び声が響くのとほぼ同時、地面に激突した魔道具から閃光がはしる。そして吹き荒れる魔素の嵐。

 殺傷能力はない、撹乱用の魔道具だったが、今の場合は効果絶大だった。

 普段水中で活動しているであろう半魚人とその眷族達にとっては初めて味わうであろう激しい閃光。そして意識をかき乱す魔素の嵐で、すっかり混乱に陥っていた。


「ロア、腕を!」


 一人で戦線を支えていてくれたロアをかっさらうようにして、私たちはその場を離脱していった。


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― 新着の感想 ―
[一言] インスマウスみたいのかな?今後、クトゥルフ的な見た目のやつらが出てくるんでしょうか。 タコみたいな不気味なのだったらイヤだなぁ(^^;)
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