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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第二章

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新たなお仕事を引き受けよう!!

 道路事業の手伝いをはじめて、はや数週間。


 数日おきに現場へと通い続けて来たが、ついに私が錬成獣を使って手伝える分の仕事は、終了してしまった。


 カリーンからもちょうど別の業務を頼みたいとの伝言があり、久しぶりにカリーンの天幕へと向かうことにする。


「お邪魔します?」


 天幕の中へと入る。すぐさま感じたのは、どんよりとした、重苦しい雰囲気。

 錬金術協会で、納期に追われた部署に手伝いに行かされた時に感じたものと、それは同じだった。


 思わず、そっと天幕の入り口を戻して、自分の天幕へと帰ろうかとしたその時だった。

 横からにゅっと伸びた手に、腕が掴まれる。


「ルスト、ちょうど良いタイミングだ──」


 手を掴んでいるのはカリーンだった。

 相当タフでいつもエネルギッシュなカリーンが、珍しく目の下にくまを作り、ゆらゆらとしている。


「カリーン、様? 何か新しい仕事があるとか?」


「ああ、ある。しかしその前に、これを手伝ってくれ」とその怪力で引きずって連れていかれた先にあったのは書類の山だった。


 天幕内の明るさは変わらないはずなのにどこか陰うつな空気が漂うその場所。

 それもそのはす。

 いつもカリーンの天幕で事務仕事をしているのを見かけるカリーンの部下達の青白い顔がその山の向こうに見えたのだ。


「っ!」思わずもれかける悲鳴。


 私は咳払いして、ごまかす。


「ごほっ。これは何の書類、ですか?」と、私はこれを手伝うのかと思いつつきいてみる。


「この領への転領希望者なのだよ」とカリーン。


「あー。それは人気が出てきたって事ですかね? 喜ばしい事、ですよね?」


「しかし多すぎる。そして短期間で急増した。ルストはあの山を頼む」


 どかっと椅子に座り、事務仕事を始めるカリーン。眉間にシワが寄っている。


 私は言われた書類の山を抱えると、移動させる。


「参考にする書き方の例はある?」


 私がカリーンに訪ねると、カリーンの部下の青白い顔の事務官の一人が書類を貸してくれる。

 それを参考にして、私は処理毎に書類をさばき始めた。


 そうして仕分けした中から、優先順位の高いものをピックアップする。


「ほう! ふむ──」


 私は書類を前に、無心にペンを動かし続ける。


 ほとんどが単純作業だった。そうして気がつけば、カリーンから渡された書類の山の処理が無事に終わる。


「カリーン? カリーン!」


 私は終わった事を告げようとカリーンを呼ぶも、返事がない。

 キョロキョロするも見つからない。

 立ち上がってみると、カリーンは天幕の中央にある通信装置の所で、机につっぷして寝ているようだった。


「カリーン、こんなところで寝ないほうがいいよ……」とカリーンの肩をゆすりながら伝える。


「ああ、失礼」と起きるカリーン。すっかり眠そうだ。


「カリーン、それで結局、依頼ってのは何なんだい?」


「ああ、そうだったな。見てわかる通り、転領希望者が増えすぎてしまっていて、このままじゃ、この野営地だけだと確実に手狭になりそうなんだ。どうも王都で不審な事件が多発しているらしくてな。そのせいか、急に希望者が増えてきているんだよ。それで頼みたい事というのは──」


 と指を一本立てるカリーン。


「この野営地以外の場所で、新しい領都候補に相応しい場所を探して来てほしいんだ」


「わかりました。それで何か条件などはありますか?」


「詳しくはロアに伝えてある。道すがら彼女と相談してみてくれ」


 それだけ告げると、カリーンはふらふらと書類仕事へと戻って行った。










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― 新着の感想 ―
[気になる点] 近場に他の領地無いのかな
[一言] 転領希望者っていうか、避難民? これから開拓って感じの新興領地だってのに、急激な拡大は面倒の種でしかないですな。 王都からは独立を疑われたりするかもしれませんね。
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