ヒポポブラザーズ!!
「『複合展開』」
私の両手から八本のスクロールがふわりと浮き上がると、スルスルと開いていく。くるくると私を中心にして等間隔で円を描くようにして、八本のスクロールが回転を始める。
「『結合』」
私は右手を伸ばし、次のコマンドを唱える。八本のスクロールを結ぶようにして、空中に魔法陣が描かれていく。
八本のスクロールそれぞれを頂点にして、八角形の魔法陣が完成する。
スクロールが移動し、それに伴って魔法陣が伸ばした私の右手の前へ。
そこへ振り下ろされてくる、巨大モグラモドキの爪。
「『連続顕現』ヒポポブラザーズ」
巨大モグラモドキの爪が、魔法陣からにゅっと現れた巨大な前脚に、受け止められる。
ドンッという衝突音。吹き抜ける風が私の前髪を揺らす。
魔法陣から、すぐさま前脚の本体が現れる。その出現の衝撃だけで、巨大モグラモドキが吹っ飛ばされていく。
現れたのはヒポポの弟分。見た目もヒポポとそっくりで、ただその体躯だけは巨大モグラモドキを上回る大きさの、八本足のカバだ。
「グモー」雄叫びをあげ、そのヒポポブラザーが巨大モグラモドキを踏み潰そうと、駆け出す。その一歩に、大地が鳴動する。
しかしそれだけでは終わらない。魔法陣からは大小さまざまな大きさのヒポポブラザー達が次から次へと現れる。
小さいものは私の腰ぐらい。
ヒポポブラザーズが、倒れこんだままの巨大モグラモドキへと殺到する。
そして始まる、踏みつけによる蹂躙。
最初に顕現した巨大ヒポポブラザーによる、渾身の一踏み。
それは容易く巨大モグラモドキを貫通し、大地に大穴をあける。
四肢が千切れ飛ぶ巨大モグラモドキ。
本体から離れた部分がそれぞれモゾモゾと動き出す。しかし、それらが十分に動きだす前に、後続のヒポポブラザーズが蹂躙の現場に到達する。
巨大モグラモドキを構成していた無数のモグラ達は、一匹残らずヒポポブラザーズの脚によって踏みつけられ磨り潰されていく。
その時だった。踏みつけを逃れ、ふわりと浮き上がり離れようとするものが見える。
巨大モグラモドキの頭に生えていたキノコだ。
笠の部分を大きく広げ、風に乗るようにして浮かび上がったキノコ。
「キューーー」
肩にとまったままだったセイルークが高らかに一鳴きする。ふわりと飛び上がるセイルーク。
次の瞬間、くわっと広げたセイルークのあぎとの奥に、急激な魔素の高まりを感じる。
光が収束していく。
「え、ちょっ! 皆、伏せ──」叫びながら、私も伏せる。
一瞬の静寂。
そして、目を焼くほどに輝く光が、セイルークの口から飛び出す。辺りを煌々と照らしながら、それは一直線に、空に浮かぶキノコへと到達する。
伏せをしたヒポポブラザーズ達の頭上、光は、キノコを貫通し焼き尽くし消し炭すら残さず、空へと消えていった。




