襲ってきた敵を排除しよう!!
「どこからっ?」
「下です!」とアーリは、叫ぶとともに手にした槍を突き出す。
槍の先にまとわせた魔素がするすると伸びる。
その伸びた先、ちょうど地面がぽっこりと盛り上がってくる。鋭く伸びた魔素が、盛り上がった土へと突き刺さる。
「堅いっ。──ギリギリ仕留めました。敵はモグラ型です」とアーリ。
地面の盛り上がりが止まっている。
アーマーサーモンを軽々対処していたアーリがギリギリと言っているのだ。私は警戒レベルを上げることにする。
「セイルーク、高く上がっていて!」と私は上空に避難しているように伝える。
「次、二体来ます。左前、お願いしますっ!」とアーリ。
左右の地面が二ヶ所、盛り上がる。アーリが槍を繰り出す。
「ヒポポ、左だ。頼む!」
地面の盛り上がりが割れ、モンスターが飛び出してくる。それは、モグラをベースに、何種類かの生き物が混じった姿。まるで、モグラモドキだ。
「ぶもーっ!」
ヒポポの踏みつけ攻撃が、飛び出してきたモグラモドキの鼻先をとらえた、かに見える。
しかし、モグラモドキに掠りはするものの、回避されてしまう。上に乗るアーリの攻撃の邪魔にならないように、タイミングが遅れてしまったのだ。
するするとヒポポの足に取りつき、登って来るモグラモドキ。腹部から虫の足が生えているようだ。カサカサと素早い。
私が急ぎスクロールを取り出した時だった。
目の前を白い影がよぎる。
「セイルーク!?」
上空にいたはずのセイルークが急降下したかと思うと、その鋭い爪を振るう。
ヒポポの足に取りついていたモグラモドキが一瞬でバラバラになる。
「すごい。これがドラゴンか……」思わず、私は感嘆の声をもらしてしまう。
悠々と上空に戻っていくセイルーク。
「セイルーク、ありがとう!」
「キューーー」
次々に地面が盛り上がり、モグラモドキが現れる。しかし、上空からのセイルークの援護もあり、全て難なく撃退していく。
「もう、大丈夫です」と未来視が終わっただろう。アーリから襲撃終了の宣言が出る。
「ふぅ。ありがとう、アーリ。ヒポポもセイルークも、お疲れ様」と皆を労る。
尻尾をフリフリ返事をするヒポポ。セイルークも地面に降り立ち一鳴きする。
ヒポポとセイルークが、アーリの倒したモグラモドキの一体に近づいていく。
鼻先をそのモグラモドキへと近づけると、ぶもぶも、キュウキュウとまるでなにやら相談しているような素振りを見せるヒポポとセイルーク。
「何かあるのでしょうか」と不思議そうにそれを見つめるアーリ。
私は念のため、採取用の純化処理を施した手袋をはめると、転写のスクロールを展開しながらモグラモドキの死体を観察していく。
「どうも、キメラタイプのモンスターですね。モグラとネズミとムカデかな。それに、腹部の真ん中にあるこれは……キノコかな? 四種が混じっているモンスターのようですね。ここら辺ではあまり見かけませんよね」
「はい、私は四種も混じったモンスターは初めてです」
「新種っぽいですね。それでヒポポとセイルークは何が気になるの」と私が訊ねる。
「ぶもぶも……」と嫌々するみたいに首を振るうヒポポ。
「ふーむ。ヒポポは嫌悪感らしきものを感じているみたいですね。転写のスクロールで見た限りは毒とかは無さそうだけど」
私はそっと地面にモグラモドキを置く。
「素材回収もやめた方が良いの?」
「ぶもぉ……」と自信なさげなヒポポの声。
「どうもヒポポ達も、はっきりとは分からないみたいですが念のため燃やしておきましょう。少し時間大丈夫ですか?」
「はい、お手伝いします」とアーリ。
私は防護処理の施されていない物で触らない方が良いとその申し出は断る。先に念のためヒポポとセイルークの手足だけ、少量のポーションをかけておく。
それを済ませてから、モグラモドキの死骸を全て集めると、ヒポポの掘ってくれた穴に入れ、火をつける。
燃え立つ炎。
その炎の中で、モグラモドキ達の腹部からポロっと落ちたキノコが、燃え上がる直前に一瞬動いたかのように、私には見えた。




