白トカゲを餌付けしよう!!
一瞬、私は身を固くするが、白トカゲはローズの蔦で出来たかご型のケージの中で大人しくこちらを見つめている。
じっと佇み、こちらを見るその瞳は、初めて見たときと同じく、いやそれ以上の知性を感じさせるものだった。
「あれ、脱皮している?」
私は、白トカゲが脱ぎ捨てたと思われる皮が、ケージの中に残っているのを見つける。
その時だった。まるで私の呟きに答えるかのように、白トカゲがその背中から生えた羽を広げ、羽ばたいて見せる。
「キュルルルー」と可愛らしい鳴き声を出しながら。
「な、羽?! そうか、前に膨らんでいた部分あったけど、こぶじゃなくて羽が生えようとしていたのか。それが脱皮で──。と言うか、もしかしてトカゲじゃ無くてドラゴン?! 初めて見た……」
「キュル」
「はあ、参ったな。まさかドラゴンの幼生体だったのか。何でまたあんなところに居たんだ。いや、そんなことより、どうするかなこれ」
私が悩んでいると、くぅーと白ドラゴンのお腹が鳴る。
「うん? お腹空いているのか?」
「キュルキュル!」と首を縦に振る白ドラゴン。
「何かあったかな……」
私がポケットを探ると、食べかけの携行食が出てくる。カリーンに草レンガと揶揄されたやつだ。
「食べる?」
私は携行食を割るとローズの蔦の隙間からそっと差し入れ、床に置く。
ゆっくりと携行食の欠片に鼻先を近づける白ドラゴン。
「くちゅっ」
白ドラゴンがくしゃみをする。そしてそのまま嫌そうに顔を背けながら、後ずさる。そのつぶらな瞳で、不信の眼差しを向けてくる白ドラゴン。
「あれ? 食べ物ってわからなかったかな?」
私は残った方の携行食の欠片を白ドラゴンが見えるようにして食べて見せる。
それを見て、何故か信じられないこいつ、みたいな顔をする白ドラゴン。
口に広がる草の香り。
私は携行食を飲み込みながら白ドラゴンの行動に首を傾げる。
「ああ、ドラゴンだから肉がいいのか。何か素材用に取っておいたモンスターの部位が、そこら辺にあったかも……」
「キュキュキュ!」と激しく首を横に振る白ドラゴン。
「キュッ!」とその尻尾を掲げ、ビシッと横に向ける白ドラゴン。
「うん、何だ?」
私が白ドラゴンの尻尾の指す先に視線を移す。どうも尻尾は、ローズに渡していたポーションのボトルを指しているようだ。
私は試しにリュックサックから別のポーションを取り出し、ボトルの蓋を開けると白ドラゴンのケージに近づけてみる。
先程とは違い、飛び付くように近づいてくる白ドラゴン。
「ええと、とりあえず、安全な量をあげてみるか」
私は実験で使う硝子の小皿にポーションを垂らすと、ケージに近づける。
ケージを形作っていた蔦を少し動かして小皿を入れる隙間を作ってくれるローズ。
「ありがと」ローズにお礼を言いつつ、小皿を置く。
白ドラゴンがすぐさま小皿に顔を突っ込むも、一生懸命舌でペロペロとポーションをなめている。
あっという間に空になる小皿。
「キューキューキュー」空の小皿を前足でこちらへ押し出してくる白ドラゴン。まるで、もっともっとと言っているかのようだ。
「ええっ?! 本当に飲むのか? 普通の生き物は本能的に嫌がるはずなんだけど……」
私はしばし悩むも、白ドラゴンのあまりに飲みたそうな様子と、本当に飲むのかという好奇心に負けてしまう。
それでも最低限の準備として転写のスクロールを展開し、白ドラゴンの変化に気を付ける様に心がける。
「ローズ」と、声をかける。
いざという時はよろしく、と言う私の意を汲んでくれるローズ。
わかってますよ、とばかりにバラの花を揺らして応えてくれる。
私は先程と同量のポーションを小皿に垂らす。垂らすそばからペロペロと舐めていく白ドラゴン。
私は転写のスクロールを注視する。
「不思議だ。何の悪影響も出てない」
そのあとも何度もおかわりを要求する白ドラゴン。
迷いながらも慎重にポーションを注いでいく。
「けふっ」
お腹いっぱいになったのか、小さくげっぷをして丸くなる白ドラゴン。そのまま安心した様子で、白ドラゴンは眠ってしまった。
「……名前でも、つけてあげるか」
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