side リハルザム 11
ちょっとだけグロテスクな描写があります。
苦手な方のため、あとがきにあらすじを記載しておきます。
後ろ向きにパタンと倒れるリハルザム。
いつの間にか増えていた通りにいる人々の視線がリハルザムへと集まる。
倒れたリハルザムの顔に刻まれたアザの縁から、ポロっと何かがこぼれていく。
それは小さな小さなキノコだった。
アザと同じ色合いの真っ黒なキノコ。それがリハルザムの顔を転がり落ち、地面へと落下していく。地面に落ちたキノコは、ゆっくりと大地の中へと沈んでいき見えなくなる。
それが合図だったのように、リハルザムの体に急激に異変が起きる。白目を剥き、バタンバタンとその体が跳ねたかと思うと、左足の腫れが急速に消えていく。
「お、おい。あんた、大丈夫か?!」通りかかった人がリハルザムへと声をかける。
リハルザムからの返事は、ない。
リハルザムの全身からキノコが生え始める。
それは初めに生えた真っ黒なキノコと同じもの。あっという間にリハルザムの全身は真っ黒な粒々としたキノコに覆われていく。
あるものは大きく育ち。あるものは小さいまま溢れるようにリハルザムの体から剥がれ落ちていく。剥がれ落ちたキノコはやはり不思議な事に地面の中へと潜り、見えなくなっていく。
体の震えが止まり、ガバッと起き上がるリハルザム。
周囲から、悲鳴が上がる。
キョロキョロとした挙動を見せるリハルザム。しかし、僅にキノコに覆われずに残った瞳はすぐに、自分の両手へと向けられる。その人指し指の爪先から生えていたキノコ。
それがモゾモゾと動きながら、人指し指の中へと潜り込んでいく。リハルザムの指先の肉に潜り込んだキノコがその肉を取り込み、空いた肉の隙間に自らを同化させていく。
同じことが、すぐに手のひら全体で起きる。
腕も。
胴体も。
そして顔面も
リハルザムの上半身の肉がキノコに置換されていく。
しかしその面影はリハルザムのもの。刻まれたアザも健在。そしてその瞳だけは何故か人間の時と変わらないままだった。
その一方で、リハルザムの足だった部分はどろどろに溶けだしていく。粘菌と化していく下半身。
リハルザムの上半身がポヨンと音を立てて下がる。その身長が一気に半分近くになる。
それは、まるでどろどろのスライムからキノコの上半身が生えているかのような見た目に変化していた。
周囲の人間の悲鳴が、怒号に変わる。
「モンスター?!」「違う、これは魔族だ! 人間に化けてやがったんだ」「アーマーサーモンが空から襲ってきたのもこいつのせいに違いないぞ」
周囲の人間から上がる怨嗟の声。
「殺せ!」「魔族を殺せ!」「さっさと殺せ!」「軍だ、はやく軍を呼べ!」「魔族なら軍じゃダメだ、騎士様に連絡しろ」「錬金術師は?」「怪我した見習いしかいないぞ。おい、やつを見ろ。動いたぞっ」
周囲から浴びせかけられる殺意に、キョトンとしていたリハルザムも身の危険を感じたのか身じろぎする。
その体を構成するキノコ同士の隙間から、胞子が噴出する。
「ヤバい、毒か?」「毒! 逃げろ逃げろっ」「きゃ、押さないでよ!」「通せ!」「俺が先だ!」
胞子を毒と勘違いして、我先にと逃げ始める周りの群衆。
あっという間にリハルザムの周囲から人気がなくなる。
「──お、で、にん、げン。まぞ、く、ちが」
キノコに置き換わってた舌で必死にしゃべる、リハルザム。しかしその言葉を聞くものは、すでに誰もいなかった。
【あらすじ】
リハルザムは呪術師の手によりキノコのモンスターにされてしまう。人間からは、魔族として迫害を受けるようになる。




