ヒポポえらい!!
私が帰りもスタミナポーションのお世話になって、倒れた神官騎士の女性の元に戻ると、ヒポポの勇ましい鳴き声が聞こえてきた。
「ぶもーっ」
ヒポポの右前足、高速の踏みつけ。
どしんという音。
するりと、何かの影が、ヒポポの足元をすり抜けて行くのが見える。
舞い上がる砂ぼこり。ヒポポの息が荒い。
私はとっさに手にしたままのスタミナポーションをヒポポに投げる。
くるくると回りながら飛ぶ、ポーションの残ったボトル。
そのままちょうど、ヒポポの背中に命中する。
スタミナポーションがヒポポにかかる。
「ぶもぶもっ!」
ヒポポの喜んでいるような声。そしてその動きに、キレが戻る。
ヒポポは後ろ足二本で立ち上がると、一気に地を這う影へと飛びかかる。飛びかかりざまに残りの六本の足で繰り出される、連続した踏みつけ。
ドドドドドドドドっという地響きが、私の所まで伝わってくる。
何かの体が、踏み潰されたようだ。
そのまま勝利の雄叫びを上げる、ヒポポ。
私は急ぎ、ヒポポの元へ。
「大丈夫か? 何がいた、ヒポポ」
「ぶもぶもっ」
器用に自らの右前足をあごで指し示すヒポポ。
私は片ひざをつき、そっと様子を窺う。
ヒポポがゆっくりと足を上げると、そこには真っ黒なシミが。
「これは、例の使い魔か! このタイプだと呪術師のやつだな。よくやったぞ、ヒポポ」
私はヒポポを誉めておく。
「ぶももー」
誉められて嬉しそうなヒポポ。尻尾がひくひくしている。
「こいつがきっと神官騎士の彼女を狙っていた使い魔、だよな。やっぱり近くに潜んでいたか」
私はとりあえず完全に潰れているのを確認すると、そのまま女性への治療を始めることにする。
とはいっても、ポーションをかけるだけだが。
「失礼します」
そう声だけかけ、脇腹を探る。
神官服を丹念に探っていくと一条の引き裂かれた破れが見つかる。その下にある、うっすらとした切り傷。私は先ほど作った金色のポーションを一滴、傷へ垂らす。
皮膚についた一滴のしずくから金色の光が溢れだし、彼女の全身をおおう。光が消えた後には、つるりとした皮膚が再生されている。
私はいったん、数歩、後ろへ。
その直後、私の想定通りに、彼女は目を覚ました。




