圧倒しよう!!
リハルザムが左腕を振り下ろす。
地面に叩きつけられたキノコから胞子らしき粉が広がると、大地にキノコが生える。
にょきにょき、にょきにょき。
急速に生えてきたキノコには、それぞれに小さな手が見える。
その手を大地に押しあて、自らの体を引き抜くキノコ達。
プチ、プチプチ。プチプチプチプチプチプチ────。
辺りにキノコの繊維が引きちぎれる音が、無数に響く。
現れたキノコの石突き部分には、小さな足も見える。それらを動かし、わらわらとこちらに向かってくるキノコ達。
大小様々なキノコが笠をふりふり、うごめくように。
次々に生えては自らを引き抜き、歩きだすキノコ達。
私はちらりとだけそれを見て、スクロールを発動する。
「《研磨》」
宙に浮いたスクロールから竜巻が発生する。竜巻が、そこに含んだ金剛石の粉でキラキラと光る。
「ごめんね、処分させてもらうよ」私は、それ自体には何の罪もないであろうキノコの錬成獣達に謝る。そして、竜巻が横向きになり、キノコ達へ向くように、研磨のスクロールを動かす。
「《リミット解放》最大出力《対象》研磨のスクロール」
私は素材加工用にかけていた制限を解除する。
竜巻が、解き放たれる。ぐぐっとスクロールから溢れんばかりに大きくなると、どんどんと伸びていく竜巻。それは大地を抉るようにうねりながら、キノコ達を蹂躙していく。
──完全に細切れにした方がいいだろう。どんな特性の錬成獣かわからないからな。
竜巻の縁に触れズタズタに切り裂かれたキノコの破片が辺り一面に飛び散る。その破片すらも竜巻の吸引力で吸い込まれていく。
その全てが、粉砕されていく。
竜巻の中で土と混じりあい粉微塵になったキノコ。それはまるで出来立ての茶色のスムージーのようだ。そのキノコスムージーが竜巻の先端から、噴出する。
その先には、たまたま、リハルザムの姿があった。
全身に茶色のキノコスムージーを浴び、その勢いで後ろへ倒れこむリハルザム。しかし、キノコスムージーの噴出は止まらない。
倒れたリハルザムに積み重なるかのように、キノコスムージーがどんどんと、かかっていく。
「あっ」私はスクロールの展開を止める。
「うっわー、相変わらず容赦ないね」「一瞬でした、やはりお強い」「凄い威力」カリーン達が後ろで騒いでいる声がここまで聞こえてくる。いたたまれない。
キノコスムージーを掻き分けるようにして、むくりと姿を現すリハルザム。
「ぶへっ。ペッ。──お、お、俺のキノコが! 俺のキノコ達がっ。あ、あああっ! よくもよくも──」一層ヒートアップした様子のリハルザム。両手でキノコスムージーを掬い上げ、涎とスムージーを撒き散らすように叫び声を上げるその様子には、正直、ちょっと引いてしまう。
「────っ! ──!」
そんなリハルザムだが、何やら次のスクロールを取り出して叫んでいる。
興奮しすぎてひび割れた声は、よく聞き取れないが。
「《──》──」
リハルザムが取り出したのはまた、錬成獸の《顕現》のスクロールのようだ。再び、リハルザムはスクロールを発動する。




