SS 地下水脈ダンジョンへ《第四世界》
「レニアスタ嬢! 見えました、あれです! ……あっ」
チッタが前方を指差して叫ぶ。周囲の大地より数段低くなった窪地。その窪地の一部が崖のようになって、断層が見えている。
どことなく不吉なチッタの最後の言葉にもならない声。私は思わず前方の窪地の崖を確認して、すぐに状況を把握する。
──ダンジョンの入り口、あれよね。崩れている。隙間は、あるみたいだけど。
「チッタさん! ここは鍵の魔晶石は!?」
「すでに、いらなくなってますっ! でも、あれでは……」
私は後ろを振り向く。
ヒルダちゃんの騎獣は、必死の様子だ。その後ろに迫る、神喰いたち。開かれた口からは牙がのび、走る度に唾液が辺りに飛び散っている。
──ヒルダちゃんたちはもう、限界。長くはもたない。今から、別の手立てを講じてたら、どう考えても間に合わない。ならっ!
「ヒポタっ」
「ブモーっ!!」
私の声音で、すべてを理解してくれるヒポタ。さすがパパの手による錬成獣と、なぜか目頭が熱くなる。
しかし、こんなところで感傷に浸る暇はなかった。それに、この状況でそんなことをしていたらママに叱られる。
私は指先で弾くようにして、目頭の滴を飛ばすと、叫ぶ。
「チッタさん! 突っ込みます。身を低くして、しっかり掴まってっ! ヒルダちゃん」
「はいっ」「どこまでも、ついていきますっ」
ヒポタが一気に加速する。ちゃうど窪地に入る坂だ。
すぐ目の前には崖。そして崖に穿たれ崩落によって、わずかな隙間だけが残されたダンジョンの入り口。
ヒポタが、突っ込む。
その瞬間、私はひとこと叫びながら、ぎゅっと抱き締めるようにしてヒポタに体を押し付ける。
衝撃。
そして岩の破片が降り注いでくる。
打撲。
そしていくつかの尖った部分をもつ破片が、私の体を切り裂く。
しかしその傷は浅い。
全身にまとわせた魔素が、肉体を強化し、皮膚すらも堅固にしてくれる。
そしてもう一つ。
私の衝突の瞬間、地味ながらスキル『瞬』を発動していたのだ。
拡張された知覚で、体へのダメージが最小になるように、自らの体を、そして魔素を、操っていた。
それらは、戦闘の際にも意識していることだ。
ほんのわずかな腕の、傾きの変化。
首を動かし、瓦礫の頭部への打点をずらすこと。
避けきれないものについては、特に魔素を重点的に該当の部分に覆わせること。
それだけで、体の受けるダメージは大きく変わってくる。
最小のダメージだけで、その場を切り抜ける。
ヒポタと私たちが通過した場所に空く、大穴。
そうして気がつけば、私は無事に地下水脈ダンジョンへと入り込んでいた。
本日はコミカライズ22話①の更新日です!
ぐんたおさまの華麗な作画で、ルストとリハルザムの取り巻く境遇の落差がとても克明になってますー




