SS 出発《第四世界》
「すごい方だったね、レニーちゃん」
「うん、凄かった」
私とヒルダちゃんはそれぞれの騎獣にのり、街道を進んでいた。私はヒポタにチッタさんと二人乗りをしていて、ヒルダちゃんは騎獣にペンタクルスを乗せていた。
ヒルダちゃんの騎獣はなかなか個性的な子だった。大きなサルノコシカケのように見える。
昨晩、大聖堂の屋根の上まで登ってきた時もこの子に乗っていたらしい。
名前はノコシカと言うそうだ。座る場所がゆったりとした錬成獣で、ヒルダちゃんはとても優雅に腰かけていた。
ノコシカがどうやって進んでいるのか不思議に思って尋ねたところ、接地面を波打たせて進むのと、見せてくれた。とても興味深い進み方だった。
そんな私たちのもっぱらの話題は、先ほど拝謁したカリーン=ル=アドミラル閣下の事。
パパやロアから話だけは聞いていたのだけど、実際に拝謁した印象は本当に強烈だった。
「まさかアドミラル閣下からお父さんを心配するお言葉をいただけるなんて思わなかったわ。『そなたの父君の錬金術は菌類学における素晴らしい成果を我が国にもたらしてくれた。数々の保存食の開発と普及は、わが民の命をいくつも救う偉業だ。速やかなる回復を祈る』だって」
アドミラル閣下から下されたお言葉を一言違わず暗唱してみせるヒルダちゃん。どうやら相当嬉しかったらしい。
「良かったね、ヒルダちゃん」
「うん。レニーちゃんのお父さんもお母さんもアドミラル閣下はお褒めだったでしょ? 嬉しくないの?」
「嬉しいけど、なんだか不思議な気分になっちゃって」
私は少し濁し気味に答える。
実は気になってしまうことがあったのだ。
はじめて拝謁したアドミラル閣下は、私の目にはどこか神をその身に降ろしたタウラ猊下と似た感じを受けたのだ。
もちろん、大託宣の儀の時のタウラ猊下のように神気をまとっている、と言うわけではなかった。
ただ、その存在の奥行が普通の人よりは深いように見えたのだ。
──そういえば、パパから聞いたことがある。カリーン様は巨人族の血を引いてそれが怪力の由来なんだよ、と。それにしては小柄だったけど、もしかしたら体格じゃない部分にその血が発現されているのかもしれない。
興奮したヒルダちゃんと話ながらそんなことを考えていると、突然ヒルダちゃんの騎獣に乗ったペンタクルスが叫び声をあげる。
「あちら、敵襲です! お嬢様方、警戒を!」
後方を指し示すペンタクルス。
街道を走る私たちの騎獣を追いかけるような形で、何体ものモンスターが現れた。
本日はコミカライズ20話②の更新日です!




