表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第六章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

446/462

エピローグ 辺境の錬金術師

「ヒポタ。ようやく戻ってきたぞ」


 今、私は開拓に向かうという、かつての学友に会いに、王都近郊へと来ていた。


 学園を卒業後、フリーの錬金術師として過ごして、はや数年。

 錬金術協会の就職を蹴って始めたこの生き方だったが、最初は本当に苦難の連続だった。


 辺境地域を巡り、様々な珍しい素材を手にしては、錬成を繰り返していく日々。実績のない私の錬成品は当初はなかなか売れなかった。

 しかし地道に続けていくうち、私の錬成品にも、徐々に買い手がつくようになり、今では日銭ぐらいは軽く稼げるようになっていった。


 そんななか、舞い込んだ今回の依頼。


「長期の依頼ということだし、気楽な生活もこれでしばらく終わりかなー。……まあ、あいつの頼みだし」


 私は学友の顔を思い浮かべながら、カバ型の錬成獣で、相棒のヒポタの上で大きく伸びをする。


「ぶももー」


 ヒポタの声に視線を前に向ける。人出が増えてきた。私たちがいるのは、王都へと通じる主街道。この国の大動脈であり、穏やかな陽気とあいまって、様々な人々が行き交っている。


 長らく辺境にこもっていた身としては、そんなすれ違う人々から漏れ聞こえる会話も、久しぶりだ。



「いいか、サバサ。トルテーク。この先の採取地では──」

「あっ! そこ、足元お気をつけてっ」「っうお!」


 でっぷりとした姿の同業者らしき人物とお供の数名。

 よろけた巨体を、あわやというところで支えた、お供の人たち。


「ゾロアー、どうだ! この変装なら完璧……」

「しっ! お声が高いです……」


 騎獣にのった、身分の高そうな三人組の女性。


「ドーガの兄貴」「なんだ、デデン。怖じ気づいたのか」「いやとんでもねえっ──」


 冒険者たち。


 通りすぎていく、そんな人々。


 そしてついに王都の入り口が見えてくる。そこには大小様々な錬成獣の駄獣の姿があった。


「おーい!」


 真っ赤な髪の小柄な女性がぶんぶんと両手を振っている。そして、声がでかい。

 かなり離れたここまで、良く聞こえる。


 その両脇には、顔に布をかけ異国風のマントをまとった二つの人影。


 私はなぜか、そこで強烈な既視感におそわれる。めまいのような感覚。


 ──あれ、体が。徹夜して錬成したまま旅を強行しすぎたか……


 ふわりとした浮遊感。ヒポタから体が滑り落ちる。



「──もし。もし。旅の御仁、気をたしかに」


 目を開けると、私を覗きこむ銀髪の、シスター服をまとった美しい女性。


 ──顔に、あざがない。元気そうだ。良かった……


「あ、ああ。大丈夫です、シスター。ありがとうございます」


 ──あれ。私はいま、何を想ったんだっけ?


 急ぎ礼をつげると、立ち上がる。


「この方はアクターですよ、旅の人。あなたが騎獣から落ちかけたところを受け止めたのです」

「ああ、それは、本当にありがとうございます。アクター殿。本当に面目ない」


 私は隣に立つもう一人の教会のアクターらしき人物に返事をし、元気であることを示すと改めて礼を告げる。


「よいのです。カヘロネーも。──ああ、どうもお知り合いの方たちがいらした様子。良かった。では、私たちはこれで。慈愛のバラの加護があらんことを」


 祈りを残し、去っていくアクターたち。

 そこに駆け寄ってくる、カリーンたち。


「おおい! 大丈夫か、ルスト! 急に落ちるのが見えたから、心配したぞ!」

「久しぶり、カリーン、ロア──アーリも、げんき、そ──」


 なぜか私の頬を伝う一筋の雫。


「どうした! さっきの教会のものに、うまく受け止められているように見えたが、どこか痛むのか!」

「いや。いや、大丈夫──。目に砂が入ったかな」


 なぜか、止まらない。

 大地がぽたぽたとした雫で点々と湿っていく。


「……アーリ姉様、お知り合い?」

「……いえ、お会いするのは初めてのはずです」


 驚き顔のカリーンの後ろで、小声で不思議そうに会話するアーリとロア。


 ──何で、止まらないのだろう。そういえば、私は後ろの二人の名前を何で知っているんだっけ?


 心配そうにするカリーン。私はその間も、涙腺がうまく制御できない。


「……辺境の錬金術師として、王都にすらその名が届いている方がいらっしゃるとカリーン様から聞かされていたのですが──」


 らちが明かないとばかりに、そこへアーリが口を挟んでくる。

 変わらないその様子に、安心する。私は気がつけば、苦笑いを浮かべていた。


「お見苦しいところを見せて申し訳ない。ルストです。しばらくお世話になります」

「よろしくお願いいたします、ルスト。私はアーリ=フォース。こちらは妹のロア=フォースです」


 握手を交わす私たちを見ていたカリーンが手を打ち鳴らす。


「よし、なんだか良くわからんが、挨拶はすんだな。それでは新しい領地に向けて、出発するぞ!」


 カリーンの号令。


 私たちは歩み出す。

 こうして私は新しい仕事を始めることとなった。


 ~完~



「辺境の錬金術師~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~」Web版本編は以上をもちまして完結となります!

二年以上に及ぶ連載期間、五十万字以上のお話をここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。


今後はコミカライズの更新にあわせて、ちょこちょこSSをアップしていきたいなーと思ってます。

よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです、良い物語をありがとうございました。
[良い点] 面白かったです
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ