原初の神域
勇者へと至り、一度は私との契約が解除されたセイルーク。いまは、アンちゃんさんの眷属となったことで、再び私に連なる存在となっている。
これは、そのことで開かれた可能性。
目の前の空間の穴は、まさに運命の僅かな綻び。
──アンちゃんさんは、もしかしてこの可能性を考えて、セイルークを?
《ふははは! もっと褒め称えてくれてよいぞ! …………なんだ、年の功やら何やら言うのかと思うたが。覇気がないのー。ほれ。元気を出せ。そんなしみったれた顔をするでない。お主に心を捧げた乙女たちが、今のお主をみて、何というかのー》
傍目には、恭しい仕草で頭を垂れたアンちゃんさん。しかし、絆を通してから伝わってくるのはいつもと変わらない、そんな自慢とも激励ともつかない言葉だった。
──そう、だな。まあ、きつめに怒られる、だろうな。
《そうじゃろそうじゃろ。ほれ、ローズ殿がお待ちかねじゃ。レディを待たせるものではない。シャキッとして、さっさとゆくがよい》
「……ありがとう、アンちゃん」
私は思わずポツリと感謝を言葉にする。
私自身も戻ってこれるかわからないのを考えると、最後は言葉で伝えたかったのだ。
そしてちらりと背後を確認する。アロマカズラの蔓に包まれた、皆の姿を目に焼き付ける。
前を向き直ると、私はゆっくりと手の中のローズを掲げるように持ち上げる。
すでに煌々と放たれていた金色の光。それが収束するように二体のアンデッドドラゴンを照らして、その頭を垂れている先に空いた穴へと光が流れ込んでいく。
プレートに、すごい早さで文字列が流れていく。セイルークの勇者としての権限と、ローズの得た神の力。それが合わさりプレートによって統合される。
空間の穴自体が金色に染まる。
道が、開かれた。
そうして私は解放された転移先へと一歩、足を踏み入れた。
◇◆
「ここ、なのか」
転移した先。そこは広大な地下空間のような場所。そして、その空間にある、何よりも目立つ存在。
巨大な金属の塊。
不規則に増設されたのが一目でわかるほど、古い部品から、比較的新しく見える部品までが渾然一体となって、私の目の前に壁のようにそびえ立っている。
「あなたが原初の神なのか」
『ようこそ、勇者を従え神を屠りしものよ』
私の問いに、機械の神が返事を寄越した。




