ローズとセイルーク
私の手のなかで、ローズの本体たるその一輪のバラが、金色に染まる。神々しい光が、溢れだす。
そして花弁を一度小さく震わせると、ローズがゆっくりとその蔓を伸ばす。
蔓の伸びた先は、宙に浮いたままのプレートだ。プレートの縁を彩るようにして、その蔓が這う。瞬く間に、ローズとプレートが繋がる。
元から一体だったかのように、妙に馴染んでいるプレートとローズ。
そのプレートに、文字が現れる。ローズがプレートを通じて文字をつづっているのだ。文字すらも、バラの蔓を模した飾り文字風で書かれていく。
相変わらず静謐に支配されたままの私は、何かに突き動かされるように、その文字にゆっくりと目を通す。
心情的には、ただただその場にうずくまり、世界の全てを遮断して殻にこもっていたい。しかし、それをすることは許されなかった。
「……ああ。またなのか」
ローズの提案に、思わず漏れてしまう呟き。
プレートに示されたのは、アレイスラによって蝕まれたこの世界の、残り少ない寿命。
──アレイスラが滅する前に貪った傷跡が、この世界の根幹まで及んでしまっているせい、か。
そのアレイスラを神威たる金色の光でひり潰したローズは、どうやらその神の力を取り込んだらしい。
今やもう、一柱の神と同等となったローズ。そのローズが示すのは、残り時間の少ない世界に対する対処法だった。それがプレートの最後につづられていた。
──ローズがアレイスラの力を、か。受け皿たるロールを与えられた、私の錬成獣だからか? ああそうか、ローズは、私の状態をみて、肩代わりをしてくれたのか。
「……ローズ、すまない」
いいんですよ、と新たにプレートに文字がつづられていく。
それでも消えずにつづられたままの、根幹を傷つけれた世界への対処法。このまま、手をこまねいていれば早晩起こるのが確実の、大規模な厄災。
それは、どうしますかという、ローズからの問いかけだ。
「今度は、ローズ。お前が犠牲になるというのか……」
プレートに綴られた文字は変わらない。それが、ローズの優しさなのだろう。
私が自分自身で決断を下し、その事で自責する余地を残してくれる、ローズの優しさ。
「──ローズ、実行してくれ」
私の呟き。
プレートから光が激しく瞬き始める。
そこに舞い降りる二体のドラゴン。
アンちゃんさんとセイルークだ。
大地に降り立ち、プレートの左右に控えるように並び立つと、その口先をゆっくりとプレートへと近づけていくアンちゃんさんとセイルーク。
プレートへと口先が触れた時だった。転移用の穴が一つ、私の目の前の空間に現れた。




