side リハルザム 8
少しグロテスクかもしれない描写があります。
苦手な方ようにあらすじを後書きに記載しています。
「くっ。こんな雑魚相手に俺が戦うはめになるとはっ!」とリハルザムはスクロールを取り出す。
「《展開》」リハルザムのスクロールがくるくると広がり、宙に浮く。かなり年季の入ったスクロールだ。端は擦りきれ、全体的に日焼けしたのか、黄ばみが目立つ。
「《異空間接続》《我が肉に宿れ》《寄生型錬成獣一号》」
宙に浮いたスクロールに魔法陣が描かれる。リハルザムがその魔法陣に左手を突っ込む。
ズブズブとスクロールの中へと沈み込んで行くリハルザムの左手。
「ぐおっ。つぁ」と野太い悲鳴ととともに、リハルザムが後ろに倒れるようにして、左手をスクロールから抜く。
巨大なものがリハルザムの左手に喰らいつくようにして、ずるずる、ずるずると魔法陣から現れる。
それは巨大な無数のキノコ。冬虫夏草に酷似した、しかし一つ一つが一メートル以上はあるキノコ。それがリハルザムの左手をはむようにして生えている。
「ぐおぁぁっ!」と、どうやらひどく痛む様子だ。苦痛の雄叫びを上げながら、リハルザムが左手を横に振るう。
冬虫夏草じみたキノコから無数の胞子が溢れ出し、迫りつつあった蛇蔦モンスター達へと降りかかる。
胞子がヌメヌメとしたその蛇蔦モンスターの肌の間から、体内へと滑り込んでいく。
胞子が入り込んだ蛇蔦が、ぼふっと爆発する。その肉を菌糸に食われ、皮の内側からあふれるように、キノコが生えている。常識では考えられない速度の、キノコによる成長爆発とでも呼ぶべき事象。
あっという間に、リハルザムの目の前には一面、見渡す限りキノコだらけとなる。
しかしそれでも、仲間のキノコ化した死骸の下を這い進むようにして、近づく蛇蔦モンスターがいる。そいつがリハルザムへと飛びかかる。
「あああああっ!」野太い雄叫びを上げながら、リハルザムが左手の巨体キノコを振り下ろす。その巨大な質量で、蛇蔦を押し潰す。
巨大キノコが地面に叩きつけられ激しく、胞子と砂ぼこりが舞う。
その僅かな隙のことだった。飛びかかった蛇蔦を囮として、背後から足元に忍び寄っていた、別の個体がいた。
そいつがするするとリハルザムの足に取りつく。それは、あれだけいた蛇蔦の最後の一体。リハルザムの足へ巻き付くようにして登ると、その脂ぎった太ももへと、自らの螺旋状の牙を突き立てる。
リハルザムの肉をえぐる牙。
太ももの皮膚を破り、脂肪をぐちゃぐちゃにした蛇蔦の牙は、足の筋肉をズタズタに引き裂く。
そのままリハルザムの体内へ侵入しようとする。
「ぎゃああっ!」
予期せぬ痛みに、声を上げるリハルザム。
「こんのっ! 雑魚が、雑魚が、雑魚がっ!」
自らの太ももから生えた蛇蔦の体を必死に掴み、引き抜こうとするリハルザム。しかしヌメヌメとした体はリハルザムの手をたくみにかわす。
「うぉらっ!」思わずといった様子で、自らの太ももを掠めるようにして、左手を振るうリハルザム。
ハンマーと化した巨大キノコが、蛇蔦の体を千切り、吹っ飛ばす。頭の部分をリハルザムの太ももに残すようにして。
ようやく訪れる静寂に、リハルザムの荒い息だけが響く。
辺りを確認すると、スクロールに左手ごと、巨大キノコを突っ込むリハルザム。
再び上がる、野太い声。
そして引き抜かれた左手からは綺麗さっぱりキノコの姿は消えていた。その左腕には無数の傷を残して。
震える手で、リハルザムは懐からポーションを取り出すと一気に飲み干す。
リハルザムの体に、光がはしる。
光が消えるとリハルザムの体から外傷だけは、全て消えていた。
よろよろと立ち上がるリハルザム。その姿は、砂と色々な体液にまみれ、すっかりぼろぼろになっていた。
「どれもこれも、すべてあの野郎のせいだ。この報いは絶対受けさせてやる。簡単には済ませてやるものか。そうだ、そうしよう。希望を与えて絶望の淵に叩き込んでやるのがいい。協会に戻れると喜ばしてやって、叩き潰してやるっ!」
うわ言のように呟きながら足を引きずるようにして、リハルザムは野営地へと向かっていった。
《あらすじ》
怪我をしながらモンスターを撃退したリハルザム。しかし、治療が不十分で、モンスターの一部が体内に残ってしまう。




