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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第六章

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可能性の世界のはてに

 それは、痛々しいまでに傷だらけだった。


 私の意識のなかでみえる、ロアの心。

 ところどころが大きく抉れ、その縁は、非常に鋭利な鋭さを持っている、宝石のように見える。


 気安く手を触れれば、容易く傷だらけになりそうなそれ。しかしその色合いはラピスラズリのように、どこまでも深い。

 何よりも、鮮烈な美しさがうちに秘められていた。


 ──ああ。これが、ロアの本来の瞳の色なのか


 その蒼き色を見て、唐突に私はそう理解する。


 そしてその痛みを、傷を、少しでも共有したくて、気がつけば、私は腕をのばしていた。


 そのまま、ぎゅっと抱き締める。


 すると、その鋭利に見えたものが不思議なことに、私の腕の中で鋭さを失っていく。まるで氷がとけるようにその形をかえる。

 おずおずと。

 寄り添うように。


 それはまるで、どこまでも私の腕を──私を、受け入れてくれるかのようだ。


 しかし、その安寧とした時は、ほんの一瞬だった。


 カリーンの時と同じように、ロアの『想い』と『記憶』が一つとなったそれも、私の腕の中で、端から崩れおちていく。


 現実のロアの体の、その重さを腕に感じたときにはもう、新たな金色の光の帯が一筋、ローズの蔓へと追加されていた。


 そっと差し出されたアロマカズラの蔓が、優しい仕草で意識を失ったロアの体も包み込んでゆく。


「ロアを、優しく受け入れてくださってありがとうございます。ルスト師」


 アーリがロアの頭を撫でながら、告げる。

 蔓に包まれてゆくロアを、いとおしげに見つめながら。


 私はただただ激しく首を横に振ることしか出来なかった。

 しかし、それでも、そんな状態でも気づいてしまう。


「アーリっ! 自分を最後にしたのは……」

「ふふ。さすがルスト師ですね。どの未来でも、ここで気づかれてしまうのですから」

「足りないのか、足りないんだなっ! なら、私の記憶と感情をっ!」

「ダメですよ、ルスト師は。万全の状態でなければ。アレイスラを消し去ろうとして、失敗してしまいます」


 右手に持った槍の穂先を自らの首筋に当てるアーリ。


「ごめんなさい、ルスト。愛してます」


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