三人の想い
「いや、絶対ダメだ! 感情も記憶もそれ単体で存在しているんじゃない。いくつもの事象について、複雑に絡み合っているんだ。アーリの提案通りにしたら、最悪、三人とも廃人のようになってしまう可能性だって、あるっ!」
未来視で当然その事を知っているはずなのに、穏やかな笑みを浮かべたままのアーリ。
「ルスト師。これしか手がないのです。他の未来は、全て破滅にしか帰結しません。アレイスラにこの世界にある命も何もかも、貪られるだけです」
「だがっ! ──じゃあせめて、私の記憶と感情を最初に使ってから……」
「それも、成功しません。今ですら、そちらのローズさんの制御に、多大なリソースを使われていますよね、ルスト師。それも、当然です。一つの世界を統べていたほどのローズさんの力を一つに集約され、更には複数の力を不安定な状態で、維持されていますよね?」
私の左手のなかにあるローズを指差しながらそう告げると、首を振りながらアーリが言葉を続ける。
「ご提案通りにすると、いまのルスト師でも、途中でローズさんの制御に失敗されます」
完全に論破され、私は言葉がない。
──未来視の魔眼、さすがに伝説にうたわれているだけある、ということか。本当に、厄介すぎる……
「往生際が悪いぞ、ルスト。ああ、なんだ。もしかして照れているのか?」
「ちがっ──!」
にやにやと笑みを浮かべたカリーン。アーリとロアも二人して顔を見合わせると、はにかむように笑いあっている。
「でだ、アーリ。具体的にはどうすればいい?」
「……接触していると、効率が良いようです」
カリーンの質問。それに澄ました顔でアーリが答える。その視線は、装着したままのカリーンの鎧を見ていた。
「ふん。じゃあ、こうか。ルスト、少し屈め」
「ちょっ、まだ話しは終わってな──」
怪力によって強制的に引き寄せられ、そのまま抗議を封じられた私に、アーリからの追撃。
「ルスト師、もう本当に時間がありません。お願いです。私たちの覚悟、無駄にしないで」
──ああ
私は間近に感じられる温かさに、一度きつくきつくまぶたを閉じる。
そしてゆっくりと眼をあける。瞳にうつる、その姿を心に焼き付ける。
そっと右手を掲げて、私はカリーンの心を受け取った。




