圧倒と焦燥
飛びかかったパラディンモードのイブ。
その跳躍の反動で、大地が揺れる。
すぐそばの海では、振動で波が起き、沖合いへと広がっていく。
跳躍が、高い。
セイルークの位置する場所をゆうゆうとこえ、その頭上をとるイブ。
そのイブに向かって、セイルークが再びドラゴンブレスを放つ。セイルークからみて、イブは斜め上方向に位置していた。
そのため、セイルークも首をもたげて、大きくあぎとを開いている。
「イブ。断ち切れ」
イブが、私の呟きに呼応して騎士剣を振り下ろす。
赤々とした加護の光。その軌跡が空に弧を描き、巨大な騎士剣がセイルークの放ったドラゴンブレスと触れた。
均衡は一瞬だった。
あまりに容易く、ドラゴンブレスが断ち斬られていく。
バラバラな光となって周囲へと飛び散るドラゴンブレス。その光の残骸がまるで無数の流星群のように大地へと降り注ぐ。それが地面へと触れる度に、小さな爆発が起きる。
そこかしこに小さなクレーターが生まれていく。
あわてふためくセイルーク。絆が切れた私にも、その表情がわかるぐらいだ。
セイルークは身を捻り、迫りくるイブの刃から逃れようとする。
しかし、完全にかわしきることは叶わなかった。翼のうちの一つが、中程から切り裂かれていく。
セイルークの翼を切り飛ばした騎士剣が、そのまま海面へ振り下ろされる。
海が、割れた。
その騎士剣の刃にそって、水平線の先まで海が割れ海底が露になると、押し退けられた海水が巨大な津波となって大地に押し寄せる。
するするとローズの蔓がのび、私の足の下で台のようなると、体を持ち上げてくれる。
「ありがとう、ローズ。お陰で濡れずにすむよ」
アレイスラはどうしているかと確認すると、先程までと同じ地表すれすれで浮遊していた。
そこに到達した津波は、まるで意思があるかのようにそのアレイスラを避けるようにして、大地奥深くへと進んでいく。
「なんだか、避けるまでもないって言わんばかりだ──」
私の独り言にふるふるとローズが肯定してくれる。
しかしよく見るとアレイスラの表情は、どこかいまいましげだ。
タウラが絶対しないであろう、その表情。見ているこっちの方が、違和感が強い。
──あんな顔をタウラにさせておきたくないな、これ以上。
私は決意も新たに、とりあえずは目の前のことからと、イブへと次の指示を告げる。
「イブ、穿て。迫りくるものも。逃げるものも。その全てを」
イブが私の声に応え、騎士剣を水平に構えて刺突の構えをとる。
次の瞬間、その赤き加護で出来た刃が、無数の細長い刃へと分裂する。持ち手から浮遊するようにして、その新たに現れた無数の刃が空中にたち並び、存在している。
イブの巨大な全身が一度たわむ。
渾身の突きが、放たれた。




