神域を改造しよう!
「これで、ようやく最後か……」
最後にプレートに表示された文字。
それは『神域:フラスコの世界の統括権限を受領しますか』というものだった。
そのあとに、ずらずらと注意書きらしき物が記載されている。
それをゆっくりと確認していく。
私が今ではあまり焦っていないのには、理由があった。じつはツヴァイからインストールされた断片的な知識の中に、ここフラスコの世界と元の世界で時間の流れが異なる、という情報があったのだ。
正確には、どうやらツヴァイは元の世界に対しての相対的な、このフラスコの世界での時間の流れをある程度、操作出来たようなのだ。
──アレイスラに瞬殺されていたけど、そこはやはりツヴァイも亜神とはいえ神だったってことだよね。そんな訳でたぶん、ツヴァイが食べられちゃったあのタイミングに、元の世界へ戻れるはず……。
そこまで考えながら注意書きを読み終え、私はもう何度口にしたかわからない単語をプレートに向かって呟く。あまりに呟きすぎて、これで最後だと思うと、ある意味感慨深い。
「承認」
プレートに表示された文字が消える。
ツヴァイからの、力の受領が完了した。
「──これが神の視点か……」
私は今自分のいる神域の隅々まで、感じとることが出来るようになっていた。
表層の真っ白なだけの空間。
表層には椅子がいくつか点々と置かれている。あとは不義の三席の洞窟に繋がる、時空の穴だけ。
そしてそれとは別に、地下にはツヴァイが倉庫と呼んでいた広大な空間があった。
タウラが最初に拐われたときに転移させられたのも、その空間の一部分だ。
「映像」
プレートに地下の様子が写し出される。
そこには様々な物が、雑多に詰め込まれている。
「ツヴァイって、生活感無いようにみせて、ずぼらに物を詰め込んで貯めるタイプだったのか……」
私は神域の作りを俯瞰しながら思わずそんな感想を呟いてしまう。
「ここら辺はモンスターの素材か。すごいな私のストックの何倍もの量と質だ。錬成用の機材もかなりある……これなら」
私はスクロールを展開させずに、呟く。
「顕現、ローズ」
ローズの本体たる一輪のバラが、真っ白な世界にその赤い花を咲かせる。
「ローズ。全制限を解除。構築名、『薔薇庭園』で蔓を展開。プレート、地下にある素材及び機材のリストをローズと共有」
一輪のバラの根本からいくつもいくつもバラの蔓が溢れだし、真っ白な世界を埋めていく。
ローズの蔓の一つがするすると私の手元のプレートに巻き付く。
「プレート。ローズの指示に従い素材及び機材の転移配置を開始」
地下から、いくつもの物品がローズの指示で転送されていく。
「プレート、名称変更。この神域を『フラスコの世界』から、『カゲロ機関分室』とする」
単なる真っ白なだけだったこの世界。
そこはあっという間に、見渡す限りローズ製の研究室に、変貌していた。




