エンコード
系統だったツヴァイの記憶の流入は、そこまでだった。
いつの間にかフラスコの世界に、私は一人、戻っていた。
──いや、正確には私と、コレだ。
真っ白なフラスコの世界の中、私の目の前に浮かぶのは、半透明のプレート。
最初は、その表示された文字をまったく読み取ることが出来なかったそれ。ツヴァイの力を一部取り込んだせいか、どうやらすべてが読み取れるようになっていた。
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インストールを継続しますか
・継続
・停止
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プレートに表示された文字を読みながら、私はふと気になって、プレートの画面をいったん切り替える。
表示させたのは、これだ。
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ワールドクエスト:運命の車輪を支える七つの輻
達成7/7
空に眠る太古の意志
契約者の洗脳
契約者の献身
迷宮の知恵
理を超えし者への祝福
運命の完遂
管理されし暗黒
古き血の支配者
クエストの達成にともない、神に祝福されし勇者との契約は解除されました。
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それはワールドクエストとされていた物の達成結果の履歴だ。最後まで文字が乱れていて読み取れなかった部分に、目を通す。
「契約者の洗脳、か。……セイルーク」
私はぎゅっと拳を握りしめる。ふつふつと胸の奥から沸き上がってくる何か。
無理やりそれに名前をつけるとすれば、それは怒りというよりも、哀しみだった。
「完全に、騙されていたのか。いや、悪意に敏感なヒポポまで完全に騙していたことに……。そうか、セイルークがポイントを得るタイミングのどこかで……」
セイルークと会ってからの記憶を思い返さずにはいられない。しかし、今はそれも圧し殺す。
そして、なすべきことを続けるのだと、自分に言い聞かせる。
「はぁ。これじゃあ、ツヴァイも警戒するだろうね。……続けるか。プレート、継続」
私の音声に反応し、インストールが継続される。
訪れたのは、無数の断片的な知識と記憶の流入。そしてその苦行がようやく終わったあとには、ツヴァイから引き継ぐ権限の、いつ果てるともしれない承認作業だった。




