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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第六章

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アレイスラ

「タウラ?」


 私は振り返りながら呟く。

 その様子は明らかにおかしい。それどころか、異質だ。人とは思えないほどの──


「ルスト=シュトルナ=ハーツニクス! こいつは、アレイスラだ」


 わしづかみにされながら、じたばたと手足を振り叫ぶ、ツヴァイ。何度も手足を打ち鳴らしているが何も起きない。


「うるさいと、いっただろう? 亜神のくせによくもさんざん、わらわを邪魔してくれたなぁ。ホムンクルス?」


 タウラの姿をしたものが、とても楽しげに笑う。

 純粋な悪意。

 タウラの顔でそんな顔をする存在に、思わず怖気がはしる。


 ツヴァイを握った手に、焦らすようにしながら力を込めていく、アレイスラと呼ばれた者。

 実体が浄光であるはずのツヴァイが苦痛のあまり、悶絶する。


 浄光で出来たそのツヴァイの体が、ついにアレイスラの手で握り潰され、半分に千切れた。


 ツヴァイの声にならない悲鳴。


 千切れ落ちるツヴァイの下半身を、反対の手で受け止めると、指でつまむようにして、ゆっくりと頭上に掲げるアレイスラ。


 顎をあげ、その白い喉を大きくさらしながら、口を大きく開ける。そのまま、ツヴァイの千切れた下半身を丸飲みにし始める。

 ツヴァイの下半身が、アレイスラの口のなかに消えていく。そして、その喉を通っていくのがわかる。


 こぼれた浄光のついた指先を、自らの口へつっこみ、ジュルジュルとなめとるアレイスラ。今度はその手を、ツヴァイの顔へと伸ばす。


「さあ、次は頭を潰しましょうねぇ。すべて、わらわの糧にしてくれよぅ」


 両手のひらで包むようにツヴァイの頭を握ったアレイスラ。まるで果物を絞るような気軽さで、その指がツヴァイへとめりこんていく。


「ぐぅぅっ! はーつ、にくす、……うけと、れ」


 苦悶の声。その合間に、ツヴァイがなぜか私の方へと片手を伸ばしてくる。

 私が反射的に手を伸ばした時だった。


 ぐちゅっと、ツヴァイの頭がつぶれる。

 その下に待ち受けるアレイスラの口。


 ツヴァイの上半身がバラバラになり、ドロリとした浄光が、大きく開いたアレイスラの口へと、吸いこまれるように飲み込まれていく。


 しかしその直前。私の指先は、ツヴァイの伸ばしていた手の残骸に、ちょうど触れていた。


 それが何かの引き金だったのだろう。

 転移に似た感覚。


 私は、気がつけば別の場所にいた。

 あたりは白く染まっている。見覚えがある。


「ここは、もしかして……?」

「僕の神域だ。フラスコの世界。一度来ただろう?」


 目の前に、ツヴァイが現れる。始めて遭遇したときと、同じ大きさと姿をしている。


「ツヴァイ! ──本物、か?」


 思わず私は身構える。


「いや、これは意識の残滓のようなもの。本体はすでに虚無へと還った。ルスト=シュトルナ=ハーツニクス。これは、お前に力を渡すために、急ごしらえで用意した影にすぎない。役目を果たせば、消える」

「──力?」


 ツヴァイの影はそこで深々と頭を下げるようにして、告げる。


「ああそうだ。ルスト=シュトルナ=ハーツニクス。アレイスラ、を止めてほしい。そのために、僕の亜神としての力の全てを、託す。器たるハーツニクスの血族のものなら、受け取れるはずだ。さあ、手を」


 そういって、ツヴァイが腕を伸ばしてきた。



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