セイルークの一撃
「タウラ、タウラっ」
「大丈夫です、ルスト」
どこか、ぼーとしたまま返事を返すタウラ。
先ほどの託宣を告げた時の魔素が、いまだにその身のまわりで揺らめいている。
私はタウラの様子が気になりつつも、戦況へ視線を戻す。
──ヒポポブラザーズ達を顕現している暴食の器も、そろそろ魔素が限界だ。哭き声もほぼ聞こえなくなってきた。いまだに動きを見せない妄執の一席が不気味だ。何か隠している手でもあるのか?
「ルスト、こいつは脱け殻だぞ! 意志が感じられないっ」
攻撃の手を止めないまま、カリーンが叫ぶ。
──脱け殻? 誰かに操られている? でもツヴァイ、ではなさそうだ。消極的過ぎる。
その時だった。ついに妄執の一席に動きが現れる。タコの体に生えた頭部のない人体である『妄執』に魔素が集まり始める。
魔素が満ちた『妄執』の一つがタコの体から射出される。人の上半身が、魔素を噴射しながら宙を舞い、カリーンへ目掛けて凄い勢いで飛んでいく。
「──はあっ!」
レッサーヒポポに乗ったまま、渾身の力で剣を振るうカリーン。飛んできた『妄執』は、カリーンの剣ですっぱりと両断されるも、カリーン自身も、あまりの勢いにレッサーヒポポから弾き飛ばされてしまう。
砂浜をくるくると回転しながら吹き飛ぶカリーン。しかしすぐに剣を砂に突き立て、そのままの勢いで、立ち上がる。
「凄まじいな、おい。みな、迂闊には手を出すなよっ!」
楽しげに叫ぶと、次々に射出され始めた『妄執』へと向かって駆け出した。
──迷っている暇はないか。セイルークっ
──了解した。すべて聞こえている。託宣の解釈も任せたまえ。そら、ブレスを撃つぞ。備えてくれ。
二度、追加でポイントを得ていたセイルーク。絆を通して伝わってくるその意志は、劇的に変化していた。
そんなセイルークの放つドラゴンブレス。
それはまるで神のいかづちのように、天より地上へと放たれた。




