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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第六章

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過食の末席

「ルスト師!」

「──大丈夫。──いけたっ!」


 先ほどからロア達と話ながらも行っていた準備が、無事に完了した。


 リハルザムの魔石から作った魔導具──過食の器(オーバーイーティング)、と私はこっそり呼んでいる──を起点にして、『複合展開』させ『結合』したスクロール群が、私の目の前で安定しながら浮いている。


 通常、八本のスクロールで行う『連続顕現』。

 しかし、いま私の前に浮かぶのは、過食の器を起点とした七角形の魔法陣だ。

 そしてこれが、長時間の展開が難しいスクロールの『複合展開』に対しての、私の答えでもあった。


「『全個体同時顕現』ヒポポブラザーズ」


 起点となった過食の器から、大量の魔素が、ぎちぎちと搾り取られるようにして、結合した六本のスクロールへとうつり、満たしていく。

 その間、なぜか過食の器からは、まるで悲鳴のような音が響いている。


 その悲鳴を突き破り、ヒポポブラザーズ達が現れた。


 一瞬にして、ヒポポブラザーズの全個体が、魔法陣から一斉射出されたのだ。その勢いのままに、丘の上から転がり落ちるようにして進み始めるヒポポブラザーズ達。


 それはまさに、カバの濁流だった。


 そもそも、シェルルール製のレッサーヒポポに比べると、ヒポポブラザーズ達は一回り以上大きい。子供と大人ぐらい、その大きさに差があった。


 そんな子供のようなレッサーヒポポ達を助けるように、敵に殺到していくヒポポブラザーズ。

 こんな無茶な顕現も、過食の器を使用したことによる、潤沢な魔素のおかげだった。そして何より嬉しいことに、今回は私の負担が軽い。


「──なに、これ」


 さすがのロアも、あんぐりと口をあけて濁流となったヒポポブラザーズを眺めていた。


 そうしているうちに、アドミラル領軍に今まさに迫らんとしていた巨大ウニに、ついにヒポポブラザーズ達が到達する。

 ウニが、まるでおもちゃの玉のようにカバの濁流に弾かれ、空高く飛んでいく。

 あまりの衝撃に、空中でバラバラになるウニ。


「ふぅ。無事、間に合って良かった」


 私はほっとため息をつく。


「──ルスト師、その魔導具は結局、なに?」


 気を取り直したようにたずねてくるロア。

 その指差す先は、相変わらず苦しげに悶え、悲鳴をあげているようにみえる過食の器。


「あー。簡単に言うと、魔素を溜めておけるもの、だね。ただ、なんか溜めた魔素を取り出すときに、あんな感じで変な音がするんだよね。要改善のポイントなんだけど──」

「まあ、そんなに問題はないと私は思いますよ。だんだん音も小さくなってますし」


 そういってくれるタウラ。でも確かに音は小さくなっている気もする。


「断末魔みたいで、気持ち悪い」


 相変わらず辛辣なロア。私は話を進めることにする。


「まあ、それでなんだけど、リハルザムはどうやら魔族になった時に、その八番目たる末席になったみたいで」

「過食の末席」

「そうそう」

「それであれほどの王都の食料を食い荒らしていたのですね」


 納得した様子のタウラ。


「それでその性質がちょうど魔素を溜めておく魔導具によくてさ──」

「なんとも面白くなさそうな話をしているな。ルスト」

「あ、カリーン。おかえり」

「アーリ姉様! ご無事でなによりです」


 そこにアドミラル領軍とともに、カリーンとアーリが戻ってきた。


「それで、カリーン様。ツヴァイ、いた?」


 アーリにぎゅっと抱きついたまま、ロアがカリーンにきく。


「たぶん、あの中だ」


 そうロアに答えるカリーン。

 指し示す先には、妄執の一席がいた。





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