カタパルトと穴
私はカリーンの出撃にあわせて、イブへ頷く。
掲げた指揮杖を振り下ろすジェネラルモードのイブ。
その合図に合わせてタケノコアーミーが攻撃を開始する。
まず放たれたのは、投槍だった。
武装が異なるタケノコアーミー達のうち、妄執の一席の軍から離れた部隊。そのタケノコ達に標準装備されていたのは、竹で出来た投槍だ。
そして他のタケノコアーミー達との違いは、その装備だけではなかった。
「あれ、何?」
「あのタケノコアーミー達は投擲に特化してるんだよ。カタパルトみたいだから、カタパルトタケノコって呼んでる」
ロアの疑問に、私は息を整えつつ返答する。
そのカタパルトタケノコ達によって無数の竹の投槍が、一斉に空に放たれる。
人間の平均を遥かに超える膂力を持ったカタパルトタケノコ。天高く投げあげられた竹槍が、空を青竹色に染める。
竹槍が雨のように、半魚人達へと落下を始める。
その直前、半魚人軍内に出現し、混乱を巻き起こしていたタケノコアーミー達の生き残りを含む、敵軍周辺のタケノコアーミー達は地面の中へと避難していた。
当然、半魚人達は足元へ逃げたタケノコアーミー達の作った穴を警戒する。
下へ注意を向けた分、半魚人達の上空への警戒は、疎かになってしまっていた。
妄執の一席が、慌てたようにその体に生えた人型の上半身を震わせ、互いにぶつけるようにして大きな音をたて始める。
ビタビタと人体らしき何かがぶつかり合う音。
その音に半魚人達のうち、あるものは上空を仰ぎ見て、魚めいた目を剥き。妄執の一席の近くにいたものは、とっさに妄執の一席に被さるようにして、その身を投げ出す。
そこへ竹槍の雨が降り注いだ。
どすどすという音が、瞬く間に豪雨のようなとどろきとなり、私の方にまでその音が聞こえてくる。
竹で串刺しにされた魚のような姿が、いくつもいくつも生まれていく。
「かつて、あんなに苦戦していたのが、嘘みたいですね」
その竹槍地獄の風景を見下ろして、朗らかに告げるタウラ。
そのタイミングでジェネラルモード・イブが再び指揮杖を振る。カタパルトタケノコ達による竹槍の投擲が止まる。
ちょうど最後の竹槍が大地に突き刺さったタイミングで、カリーン率いるアドミラル領軍が半魚人軍へと襲いかかった。
最初に乱戦に持ち込まれ、更に竹槍の雨を浴びていた半魚人軍だったが、意外なほどに、その反撃は強硬だった。
少しでも体の動く半魚人達はその命の最後の一息まで剣をふるい、迫ってきたアドミラル領軍へと剣を突き立てようと足掻いているのが見える。
中には竹に串刺しになったまま剣を振るっている個体まで見える。
「あれが、半魚人の厄介なところ。私も苦しめられました」
「強い生命力と、感情の薄さ故の勇猛さ、か。確かに厄介な性質だね。ただ、カリーン達の優位は揺るがない、かな」
タウラの呟きに、私はそう答える。
レッサーヒポポによる騎乗突撃の道筋を除いた半魚人軍の周辺は、先ほど地下へ退避したタケノコアーミー達によって穴ぼこだらけになっていた。
「ほら。カリーン達が通るとこだけ、タケノコアーミー達に穴を埋めてもらってたんだよ。でも周りは当然、そのまま。だから──」
──前の地震の時にも思ったけど、土木工事が一番得意だよね。タケノコアーミーって。
左翼を襲うカリーン達に対応しようとした半魚人の軍の、中央と右翼の部隊が、動き出した瞬間その穴に足をとられ、動きが鈍る。更に、地下に退避したままだったタケノコアーミー達が再び地面の下から現れて、撹乱していく。
「ああなる」
半魚人軍が十分に対応できない隙をついて、カリーン率いるアドミラル領軍による突撃が、一気に敵左翼を食い破ると、そのまま向きを変えて海にそって敵軍から離れていく。
「さて、次、いきますか」
私は再びスクロールを取り出した。




