いたわり
無事にタウラの治療を終えた私は、『転写』のスクロールをとじながらほっと安堵の息をつく。
──想像以上に重傷だったけど、とりあえずはこれで大丈夫。
手足の骨折だけではなく、折れたあばら骨で内蔵にも複数傷が見られた。よくもまあ、そんな状態で、あれほどの動きができたものだと感心する。素晴らしい働きをしてくれたタウラに改めて感謝と労りの言葉を告げる。
「うまく行き、良かった。ルストとの誓い、少しは果たせたかな」
「ああ。ただ、タウラの剣が──」
私は失われてしまったタウラの剣について言及しようとするも、タウラは無言で首を振りそれを止める。
「セーラ様もお喜び下さるはずです。全てが無駄ではなかったと」
重々しく告げるタウラ。私はじっとそれを見つめる。
そこに、声がかかる。
「ルストっ!」
「っ! カリーンかっ。良かった。無事だとは思ったが。怪我は?」
「ぴんぴんしているさ。あの程度、大したことはない」
身にまとう装備品はおろか、その大剣すらもボロボロだったが、確かに本人に怪我している様子はない。それでも私は閉じたばかりの『転写』のスクロールを再び展開してチェックしていく。
そんな私の様子に苦笑していたカリーンだったが、タウラの様子をみて何か感じたのだろう。
片眉をあげるような仕草をみせ、説明を求められる。
私はスクロールを操作しながらカリーンが大きく吹き飛ばされたあとのことを手早く伝える。
「そうか……。タウラ、お手柄だ。そなたの献身は私からみても感嘆するしかない」
「ふふ。恐縮です。カリーン」
何か分かりあったように語り合う二人を見ながら、私は次にセイルークの体を『転写』のスクロールでチェックし始める。
絆を通して、セイルークのポイントを欲する気持ちがひしひしと伝わってくるのを、一撫でしてなだめる。
「ルストも、お手柄だ。ツヴァイの撃退に成功したという一点だけでも、他の誰にもなし得なかった偉業だ」
私の肩に軽く手を置き、こちらを覗き込んでくるカリーン。
私はセイルークのチェックを中断し、そのカリーンの顔を見返す。
「しかも、ツヴァイにかなりの手傷を負わせたばかりか、タウラの加護にポイントそれに前王のご遺体も取り返したのだ。私はルストを誇りに思う」
そういって、肩においていた手で、私の背中をばんばんと叩いてくるカリーン。
いつもながら、ちょっとだけ痛い。それは、私が文句を言えるぐらいの丁度良い手加減具合の痛さだった。
だから、私はいつものように文句を伝え、カリーンも笑ってそれに謝罪してくる。
──当然、私が判断ミスでとどめをさし損ねた事を気にしているのはカリーンにはお見通しだよね。
「──さて、事後処理が大変だぞ。当然、手伝ってくれるよな、ルスト」
今だ置かれたままのカルザート王の遺体。
半ば崩壊したままの領都の建物群。
避難先にいる領民たちの移動。
それらをニヤッと笑って手で示すカリーンに私も苦笑で返す他なかった。




