脅し!
「まだ至っていない勇者候補か。いくら始祖に連なるものとはいえ、まだ未完成。これまた、無駄なことを」
そういって、うっとうしそうに片手を振るツヴァイ。それだけでセイルークのドラゴンブレスが霧散する。
さらに不可視の何かが衝突したかのように、セイルークが吹き飛ばされる。
「勇者候補をいくら倒しても、アレイスラがすぐに次のを用意してくるからと放置していたが。少し、邪魔だよ。君」
ツヴァイがセイルークを見ながら、指を鳴らす。
それだけで、起き上がろうとしていたセイルークは、がくりと崩れ落ち、腹を地面につける。
──セイルークっ! あれは前に見た重力を操る力か。やはりツヴァイ相手には、中途半端なことをしてもダメだ。
私はありったけのスクロールを取り出しながら、ツヴァイへの対応を必死に考える。
その時だった。
穴に差し込んだままだった腕を抜き出すツヴァイ。
何か巨大なものがその手に掴まれている。
「それは、イブ特製の! どうやって……」
私は目を疑う。ツヴァイが取り出したのは、地下茎経由で避難中のはずの、イブの太い竹の筒だった。
その竹の筒を地面に叩きつけるツヴァイ。頑丈なはずのそれが、簡単に縦に二つに割れる。
なかから転がり出てきたのは、タウラだった。
パチンと再び指を鳴らすツヴァイ。それでタウラもセイルークと同じように地面に押さえつけられ、声も出せない様子だ。
「どうやってとな、シュトルナ=ハーツニクスくん。なーに簡単なことだよ。こうやって空間を繋いだのさ。あとは紐づけしてあったから簡単に手が届くって訳」
そういって先ほどツヴァイが自分で作り出した空間の穴を指し示す。
──ここまでツヴァイが急に来たのもこの力か。厄介な。しかもタウラが連れ去られたときに居場所がわかる何かを仕掛けられていたと。やり口が呪術師と似ているが、紐づけとやらは、全く関知できない分、相当厄介だ。
「さてさて、シュトルナ=ハーツニクスくん。どうだい、そこのアレイスラの犬と勇者候補を解放してほしいかね?」
なぜか交渉を持ちかけてくるツヴァイ。
「いいんですか。二度の警告を破った私と交渉をしたいと?」
「交渉ではないさ。シュトルナ=ハーツニクスくん。脅しているのだよ」
青白い光で出来たその顔を歪ませて、タウラを指差すツヴァイ。
「大事なのだろう? あのアレイスラの犬が。何せ私のフラスコの世界までわざわざ助けに来るぐらいだ」
私はこっそりと準備していたスクロールの発動を一瞬、ためらってしまう。
その時だった。
セイルークの住まいだったイブ製の壁の残骸を破壊して、漆黒の影が飛び込んでくる。
それは、全身鎧をみにまとい、隕鉄製の大剣を手にしたカリーンだった。
──カリーンっ! あいつ、ちからずくでイブの竹を壊して出てきたなっ!
「うおおぉーーーっ!」
飛び込んだ勢いのままに、カリーンが雄叫びをあげてツヴァイへと斬りかかった。




