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【本編完結】辺境の錬金術師 ~今更予算ゼロの職場に戻るとかもう無理~《コミックス発売!》   作者: 御手々ぽんた
第六章

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軋み!

 変化はごくごく些細なことだった。


 私の肩にかけられた黒呪布のマントが、僅かに震え始めたのだ。それと同時にまるで世界が軋んでいるかのような感覚を、私は覚え始める。


「カリーンっ」

「どうした、ルスト」

「ツヴァイが、ついに動いたかもしれない。マントを」


 私は着ているマントの端を掴むと、差し出そうとする。

 不思議なことに、その部分だけするするとマントが伸びていく。どうやら、先ほど縮んだ分を、自由自在に伸び縮みさせる事が出来そうだった。


 驚きをうかべながらも私の手渡したマントを掴んだカリーン。その顔がすぐに真剣なものへも変わる。


「振動しているな。これは?」

「仮説だけど、ツヴァイと共振しているんじゃないかと思う」

「なるほど。ありそうな事だな。触れた感じ、私もそんな気がする」


 ──嫌なことのよく当たる、カリーンの直感でもか。しかし、どうやらこの軋むようなものを感じているのは、私だけなのか。


 私は内心ため息をつきながら続ける。


「それと、半透明のプレートが今さっきから現れていて、私がポイントを取得したと。そしてそれがどうやらツヴァイにも伝わったみたいなんだ」

「そのマントを手にいれたら、ポイントを取得したということだな。そしてそれを知ったツヴァイが、本格的に動き出したと。それでやつは?」


 相変わらず勘の鋭いカリーン。私の伝えたあれだけの事で、全て理解してくれたみたいで、話が早くて助かる。


「さすがカリーン、その通り。ツヴァイはたぶんだけど、直々にこちらの世界に出てきたんじゃないかと思う。セイルークがポイントをこれ以上獲得するのを阻止するために」


 私たちの話を聞いていた皆が、ちらちらとセイルークを見る。

 今か今かと、こちらを見ながら待っている様子のセイルーク。


「ギュルル、ギュルル」


 こんなときでも、ポイントっ! 早く早く、という意思がセイルークから絆を通して伝わってくる。


「それでこれからセイルークへとポイントを渡したら、私はツヴァイの元へと行こうと思う」


 私が今後の予定を伝えたときだった。


「お供します」「ルスト師一人ではいかせられません」「アーリお姉様がいくなら、ロアも」

「え、えっ! わ、私もお供したいですっ」


 タウラやアーリ、そしてロアばかりでなく、なぜかシェルルールまでそんなことを言い始める。


「ふふ。なら私もいくぞ──」


 どうやらこの流れなら行けると思った様子のカリーンまで、そんなことを言いだす。


「カリーン様はダメです」「お留守番」「そうだな。カリーンは『四大』に列席したんだ。本当なら王都に詰めていて然るべき……」


 そんなカリーンに向けて、口々に言い募る面々。


「わかったわかった! しかし、王都には戻らないからな! あーあ。つまらない」


 嘆かわしげに手を広げ、首を振るカリーン。

 私はそのやりとりを見ながら、皆からの好意に胸が熱くなるのを感じつつも、きついことを言う覚悟を決める。

 一息に、告げる。


「私は、一人で行く。誰かを守りながらツヴァイと対峙するのは、無理だから」


 空気が、ピリッとはりつめた。




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