軋み!
変化はごくごく些細なことだった。
私の肩にかけられた黒呪布のマントが、僅かに震え始めたのだ。それと同時にまるで世界が軋んでいるかのような感覚を、私は覚え始める。
「カリーンっ」
「どうした、ルスト」
「ツヴァイが、ついに動いたかもしれない。マントを」
私は着ているマントの端を掴むと、差し出そうとする。
不思議なことに、その部分だけするするとマントが伸びていく。どうやら、先ほど縮んだ分を、自由自在に伸び縮みさせる事が出来そうだった。
驚きをうかべながらも私の手渡したマントを掴んだカリーン。その顔がすぐに真剣なものへも変わる。
「振動しているな。これは?」
「仮説だけど、ツヴァイと共振しているんじゃないかと思う」
「なるほど。ありそうな事だな。触れた感じ、私もそんな気がする」
──嫌なことのよく当たる、カリーンの直感でもか。しかし、どうやらこの軋むようなものを感じているのは、私だけなのか。
私は内心ため息をつきながら続ける。
「それと、半透明のプレートが今さっきから現れていて、私がポイントを取得したと。そしてそれがどうやらツヴァイにも伝わったみたいなんだ」
「そのマントを手にいれたら、ポイントを取得したということだな。そしてそれを知ったツヴァイが、本格的に動き出したと。それでやつは?」
相変わらず勘の鋭いカリーン。私の伝えたあれだけの事で、全て理解してくれたみたいで、話が早くて助かる。
「さすがカリーン、その通り。ツヴァイはたぶんだけど、直々にこちらの世界に出てきたんじゃないかと思う。セイルークがポイントをこれ以上獲得するのを阻止するために」
私たちの話を聞いていた皆が、ちらちらとセイルークを見る。
今か今かと、こちらを見ながら待っている様子のセイルーク。
「ギュルル、ギュルル」
こんなときでも、ポイントっ! 早く早く、という意思がセイルークから絆を通して伝わってくる。
「それでこれからセイルークへとポイントを渡したら、私はツヴァイの元へと行こうと思う」
私が今後の予定を伝えたときだった。
「お供します」「ルスト師一人ではいかせられません」「アーリお姉様がいくなら、ロアも」
「え、えっ! わ、私もお供したいですっ」
タウラやアーリ、そしてロアばかりでなく、なぜかシェルルールまでそんなことを言い始める。
「ふふ。なら私もいくぞ──」
どうやらこの流れなら行けると思った様子のカリーンまで、そんなことを言いだす。
「カリーン様はダメです」「お留守番」「そうだな。カリーンは『四大』に列席したんだ。本当なら王都に詰めていて然るべき……」
そんなカリーンに向けて、口々に言い募る面々。
「わかったわかった! しかし、王都には戻らないからな! あーあ。つまらない」
嘆かわしげに手を広げ、首を振るカリーン。
私はそのやりとりを見ながら、皆からの好意に胸が熱くなるのを感じつつも、きついことを言う覚悟を決める。
一息に、告げる。
「私は、一人で行く。誰かを守りながらツヴァイと対峙するのは、無理だから」
空気が、ピリッとはりつめた。




